Silver

□甘い蜜の味
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ぼんやりと、土方は窓の外を眺めていた。
やるべき事は全て終わってしまい、近藤の帰りを待つ以外にする事がない。
(まるで夫の帰りを待つ妻だな。いや、その通りか…)
苦笑して、床に寝転がった。慣れ親しんだ木の匂いがする。
(…ここに引っ越してきたの、何年前だっけ…)
5年くらい前に、二人は東京の小さなアパートに越して来た。
最初は慣れなかったものの、今では近所の人達とも仲が良い。
「……暇だ」
溜息を吐いたものの、よく考えてみればこれほど暇な時間も珍しい。
これまでなら、慣れない仕事に困惑し、夫が帰ってくれば相手をする。――勿論、夜の相手も含めて。
(…今日もすんのかな…)
求められるのは、悪い気分ではない。ただ、終わった後の痛みだけは好かないが。
そんな事ばかりを考えていると、無償にあの温もりが欲しくなって来た。
「…やっべ…」
なんとか気を散らそうと別の事を考えるのだが、下腹部の熱は下がってくれない。
「……ホンット馬鹿だな、俺…」
自嘲するように溜息を吐いて、上体を起こし下の衣服を脱いだ。汚さないように上着も。己を主張し始めている自身が露わになる。
躊躇いながらも手を伸ばし、軽く扱くと歓喜の露を溢した。
「んっ…」
息を荒げ、掴んだ手の力を強くする。快楽に慣れた身体では、痛い位が丁度良い。
「あっ、くっ…」
快楽が迫ってくるものの、絶頂には導いてくれない。
躾られたこの身体は、中を弄らないと一人では達する事も出来なくなっていた。
おずおずと空いている手を伸ばした先。最近では、自分では殆ど触れた事もない。
「あんっ!」
ゆっくりと中指を挿入していくと、自分のものとは思えない、いや思いたくもない嬌声が上がった。



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