【小説】

□ツェリザカ
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「は、…は」
 戦闘開始数秒、世界は反転した。
 日に照らされたロビーは月明かりに照り、闇に飲まれた。
 そして城主、フェイファー侯ツェリザカ・クラウディス・デ・シュタインの狂気が放たれた。
 闇の中で五発の咆哮。五人の隊員の体が千切れ飛ぶ音。撒き散る血漿。
 恐怖に駆られた残りの隊員の放った5.7mm×28弾が、銃口に戻ってきて、サブマシンガンが爆裂した。
 フェイスマスクを突き破って刺さった破片と、マガジンの残弾が暴発して左腕に直撃している。出血がひどい。後方に待機していたはずの装甲車、クロムウェルがいない。
 何とか動く右手でサイドアームを構えて、レールに付けたフラッシュライトが乏しく、あたりを照らしている。
 無線機に何度も連絡を入れたが、返事はない。
 今まで10年も使えてきた隊長に見捨てられたのではないかと、不安で思考が埋め尽くされている。泣き叫びだらしなく命乞いをしたくなる本能を叱咤し、動かない足を引きずって城内を徘徊する。
 怪物の咆哮にしか聞こえない、銃声。城主が持っていたあの巨大すぎる回転拳銃だ。
 隊長も50口径の回転拳銃を予備兵装として使っていたが、あれはそれより巨大で、まるで拳銃と呼ぶにふさわしくない。いうなればストックを外したリボルビングライフルだろうか。
 それをあの怪物は悠々と片手で使いまわし、仲間たちを尽く破壊した。そうあの威力は破壊と云うにふさわしい。
 カチという激鉄の上がる音。
 恐怖で震える首を擡げ、足が吹き飛んだ。
 両足が千切れて無くなり、衝撃で後方に吹き飛ぶ。
 絶叫すら上げられず、悶え、さらに爆音。
「ぐッ!」
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