【小説】

□ツェリザカ
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 その中で人間の血が一度も混じらずに延々と続いてきた純潔のやつらの事を、青い血と呼ぶ。ちなみに一度でも混じってしまうと、爵位が無くなる。ただの騎士となってしまう。
 そして青い血には領地が与えられ、領地を好きに使う事ができる。
 領主であり、傲慢な貴族にとって人間とはただの家畜である。一週間に一度か一ヶ月に一度の割合で人を食らいにくるのだ。
 だが人も高知性生命体である。殺されるのも食われるのも御免被る。
 世界は大きく分けて二分する。人間の宗教を長にした天皇領。貴族の帝王を長にした帝王領。
 天皇領内でのやつらは狩出され、駆逐掃討され。帝王領内での人は貴族の下僕となり餌となるといわれている。
 ひどく曖昧な帝王領と天皇領の辺境。帝都から追い出された辺境貴族を、天皇直属の兵士が狩り立てる。そうやって曖昧な紛争は曖昧に続いている。かれこれ数百年ほど。
 辺境の貴族を仕留めても、いずれ貴族達の都から、異端が現れ辺境に居を成す。
「ああ。だから金でも銀でも、好きなだけ持っていくといい」
 男は長老の言葉に喉を鳴らして、今日の昼から作戦を開始するといって装甲車の中に入っていた。
 昼。
 太陽が天球の頂点に達して照っている。
 装甲車が走り出した。
 辺境侯の居城へ向かって。
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