【小説】

□ツェリザカ
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 辺境。
 これと云って何があるわけでもない、荒野の果にある寂れた村。
 木と粘土で作られた村に、装甲車両が一台。
 あまりにミスマッチだ。
 装甲車の屋根には、スポットライトと機関銃座が数個。
 そして側面には
「汝滅びよ。我は聖なる帝の使いぞ。…?」
 にび色の装甲は何の直撃を受けたのか、あちこちへこんでいたり、引っかき傷がある。
 まだ朝靄が引かぬ日の出前にすでに
 ぷしゅ、と音を立ててエアサスペンション駆動のドアが開く。
 珍しいものを見ていた子供たちが好奇心と、見知らぬ物への恐怖で固まる。
「よく、来てくれました」
 長老が開いたドアの前に立ち、中から出てきた巨漢を対面した。
「早速だが、支払いは可能なのか?」
 出てきた1人の男が聞いた。
 ダークグリーンのBDUの袖を肘上までまくって頭にBDUと同色のベレー帽、太いベルトハーネスを付けている。太ももに1挺自動拳銃を、脇に1挺大型回転拳銃を装備し、後ろ腰に無線機があり、そこから耳へインカムが伸びている。
 慈善事業でもないし、天皇からの勅命で動いたわけでないのなら、基本給以外は手に入らない。戦争はただではできないのだ。
「それは。来てもらって、悪いのだが。…やつらの寝床から持ち去ってくれて結構だ」
 男は一緒太もものハンドガンに手を伸ばそうとしたが、ふと視界の端に壮絶なものを見つけた。
 針葉樹林の山の中腹に、1つの古城を見つけた。
「貴族クラスか」
 やつらの最高クラス。青い血の貴族。
 やつらは人間に自らの血を与える事によって、子孫を残すこともできる。本来は同属間での生殖で増えるのだが、出生率が低い。それにやつらは、自分以外を嫌うという根本的な問題がある。
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