【小説】

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 角の生えた黒馬が、狂ったような速さで走っていた。本来の馬なら、とっくに潰れている距離を全く衰える事無く走り続けている。
 馬の鞍には、黒い布が跨っていた。
 否、布には顔も手も足もある。黒い革の鎧に、闇のように暗い色の剣を同じ色の鞘に入れている。
 馬の前には、6頭掛けの馬車がいる。馬は1日に1000キロ走る機械馬だ。その機械馬を操る御者も、やはり機械仕掛けの機械御者だ。
 しかし、馬車はだんだんと速度を落としている。1日に1000キロ走る機械馬でも、全速力で走りつづければ壊れる。すでに馬は三頭首をうなだれている。
「もっと! もっと速く走れッ!!」
 馬車の中から、機械御者を叱責を飛ばす。勿論、機械御者は生真面目に速度を上げようと鞭を振るうも、馬が潰れているのでは仕方がない。
 後ろの覗き窓から追ってを見る。
「ひッ!!」
 馬車の中の者は、引きつった悲鳴を上げた。
 窓の目の前、馬車の後方2メートルの場所に追っ手の白い仮面があった。
 追っ手の仮面。
 それはひどくおぞましい物だった。
 左半分に大きなひび割れがあり、そのひび割れを番で止めている。左の目の穴は番で潰れ、右にはまるで左の視界を補うように、
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