儚き旅路
□偽造家族2
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瀬維也と出会って翌日、最初に目を覚ましたのは城之内だった。
普段している新聞配達のバイトで朝早く目を覚ますのは既に日課となっている。
早くに目を覚ましたは良いが、する事がない。
海馬も瀬維也もまだ眠っている。
どうしようかと迷っていたが、取り敢えずどちらかが起きるまで待っていようという事になり、どっからどう見ても親子にしか見えない二人の寝顔を眺めていた。
【偽造家族2】
ふと、自分を見つめる視線に目を覚ますと自分を見つめる城之内と目があった。
「何をしている?」
不機嫌に問い掛ければ、城之内はにっこり微笑んで話し掛けてきた。
「早くに目が覚めちまってよ。暇だったから普段はぜってー見らんねー社長さんの寝顔を拝見させて貰ってたってワケ?」
城之内の台詞に海馬は頭を抱え込んでしまった。
人前で無防備に眠る事など今まで一度も考えられない行動である。
(疲れていたとはいえ、何たる失態。しかもよりによって城之内の前で………!!)
我ながら良く眠れたものだと半ば呆れ返っていた。
時刻は朝の八時二十分。
もう朝食の準備も出来ている頃だろう。
「瀬維也を起こせ。食事にする。」
「分かった。」
瀬維也を起こすと着替えて木馬を含む4人で朝食についた。
どこか海馬が不機嫌だったので静かな食卓だった。
それでも普段なら海馬は既に会社に出掛ける時間を過ぎている筈であり、いつも寂しい朝食を過ごして来た木馬にとって嬉しい一時だった。
「じゃあ、行ってくるぜぃ」
久々の兄との出勤で嬉しさが止まらない。