小説
□最近のこと
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あれから十年になる。
小説を書き始めてから―――。
過去の思い出はあった。
女性のこと―――。
「自分自身は小説は作文だと思います」と同人会で言った。
今は小説は作文ではないと思っている。
芸術だと思っている。
街へ出掛ける度にコーヒーを飲んで帰って来る。
Sの毎日はそんなものである。
〈江戸時代の小説家はどんなだったろう〉ふと、そんなことを考えた。
日本の世の中は冷たいものだとSは思っている。
彼は音楽が好きである。
CDなどを聞く。
そのかわりラジオは聞かない。
テレビも視聴しない。
マスコミは悪に占領されている。
創作とその内容はその人の人格である。
ある日、とぼとぼと道を歩いて行くSの姿を人は見るだろう。
誰もSという人間を知らない。
(終)