CHOCOLATE KISS
□幸せのチョコレートキス
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「…き…決まってるだろ……」
囁きにも似た小さな声、だが、それは意外にもはっきりと慎也の耳に届いた。
が、「え?」と、慎也は意地悪にも聞き返す。
「そんなの!お前が好きだからに決まってンだろう!」
何かのスイッチが入ったのか、洋助は叫び出す。
「お前がチョコ欲しいって言っただろ!俺だからじゃないのかよ!俺が嫌がったら誰彼構わずホイホイ貰うのかよ!」
言葉が次々溢れ出す。
恥ずかしいより、彼への気持ちが勝ったのだろう。
そして、怒りが。
会えなかった分、愛しい。
学校が離れているから、余計に淋しさが募った。
それは自分だけ?
慎也は?会えなくて淋しくなかった?
あんな別れ方したのだから、その思いが強いのだ。
だが、慎也は意地悪だ。
洋助が照れるのを判ってて、更に煽る。
そんな恋人に怒りがあるはずなのに、その大きな瞳から涙が零れる。
言葉を吐き出すたびに、自分の心まで溢れそうで、でも、止まらなくて………
感情の昂りが、彼からの言葉を奪った。
声が上手く出ない。
時折、しゃくりあげては、詰まった息に噎せ込み、嗚咽を洩らす。
泣きたくないのに、溢れる涙の止め方を知らないのだ。
「ごめんなさい、洋助さん」
ふわり、と、壊れ物を扱う様に、慎也は愛しい人を抱きしめる。
その、小さな体は、小さく震えている。
最初は洋助の様子に驚いた。
それでも、自分の欲しかった言葉をくれた。泣く程に自分を求めている事も知った。
慈しむように、額にキスを送り、涙で腫れた目尻にも優しい口づけを送る。
「ごめんね?」
額をコツっと当て、涙が未だに溢れている瞳を見詰める。
中には自分が映っている。
洋助の頬にさっと朱が浮かび、嫌々と、力なく首を降る。
だが、体を預けて来た。
慎也の胸に丸まる様に、力を抜く。
少しずつ呼吸も落ち着く。
慎也の腕に、力が入る。
「俺、洋助さんから気持ちが聞けて、本当に嬉しいよ。ずっと待ってたんだから」
それでね、チョコくれるかな?って聞いてみたんだよ。
そう、優しく囁く。
と、洋助の体がビクッと動いた。
不自然な体勢から、モゾモゾと動く。
必死に自分の鞄をまさぐるが、慎也の胸から抜ける気はないようだ。
そして、取り出されたひとつのチョコ。
洋助が好きだと言っていた、エアーインチョコ。
それを無造作に慎也に突き付ける。
「女子に混じって買うの恥ずかしいだろうが!」
と、体を放してチョコをグイグイと慎也に押し付ける。
耳まで朱に染まり、まだ涙がうっすらと浮かぶ瞳を反らし、受け取れよ!と、小さく叫ぶ。
恥ずかしがり屋で、意地っ張りでプライドの高い洋助に出来る、精一杯の愛情表現。
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