玩具友達

□いつもと違う
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昼飯をかっ込んで、思考がぼんやりとした今、あの快楽ばかりが思い出され、体の芯が熱を持ち始める。

それを誤魔化すように、己の膝を抱え込み、深く息を吐く。

「……まいったな…」
思わず口に出た駿輔の言葉に、横でだらしなくフェンスに寄り掛かっていた知己が、あぁ?と、反応する。

だが、呟きが聞こえたのに気が付いていない彼に、視線だけ移す。

「なにがよ?」
突然の呟きの意味を聞いてみても、不満気な駿輔の視線を貰うだけで、続く言葉はなかった。

「何だよ、俺が原因か?」
思い当たる事は、有るような無いような。そんな曖昧な態度の知己を、更に不満そうにみやる。

が、当の本人はただ駿輔に冷めた視線を投げるだけだった。


知己は本心は口にしない。
只、駿輔に思わせ振りな視線を向けるだけなのだ。

駿輔はそんな知己の目線が嫌いだった。
全てを見通すような茶の瞳を向けられると、息を呑むような緊張感と、痺れるような緊迫感を味わうからだ。

知己の視線は、駿輔に多大なる影響を与えるのだ。


それを知ってて、知己は業とそれを向けるのだが。

「……ンな目で…見るなッつ…の」
それでも反らせないまま、自分を見る駿輔を見るのが好きだった。

捨てられた子犬のような上目遣いで、何とか見えない腹を探ろうと、戸惑うその態度は、知己の中の雄を刺激する。

征服感を刺激され、更に追い詰めたくなるのだ。

だが、本人はそれに全く気が付かない。


だからこそ、駿輔を追い詰める視線を送る。
見詰める程に、不安を隠せなくなる駿輔を見る度に、背中を駆けるゾクゾクとした感覚は、更に知己の中を刺激し、堪らない優越感と姿を変える。


だが、今回は何時もと違う。

駿輔は怯えてはいない。
何か別の、得体の知れないものを感じている。


だが、その意味が直ぐに分かった。

艶だ。

駿輔の瞳には、艶がある。
知己の与えるそれが、駿輔の中で、熱に変換され、あの夜に与えた快楽を呼び起こしているのだ。

それが出口のない燻りになり、甘い吐息を吐き出させているのだ。


何をした訳でもないのに、駿輔の瞳を潤み、熱の吐き出し口を求める。


その媚態が、知己の雄を刺激し、更なる征服欲を持たせる。

ゴクリと喉が鳴る。
男らしい喉仏が、ぐりぐりと上下する。

駿輔を見詰める視線が、肉食獣のような強いものへ変化していく。



――――もう、反らす事は叶わない。



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