七つの世界のかけら

□第二章
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浮いてるのか、流されているのか。

上下の感覚がない。


ただ解るのは、漂っている。それだけ。


真っ暗の、光のかけらさえもない、闇の中を、ただ、プカプカと漂う。




―――――死ぬって、こんな感じかな?

妙に冷静に、今の状況を分析する。


息をしていないが、苦しくはない。

目蓋を閉じたままなのに、闇だと判る。


やっぱり、死んだのかな?







遠くで、誰かが何かを話している。

それは、囁きから、徐々に耳に残るものになっていった。

切なそうな、少女のそれだった。


″……て………が…………から………″

――泣いてる?


″…っ……し……かい……を……ら……″

――どうしたの?ねぇ、泣かないで?


″……後悔してる…?…″


突如、はっきりと頭に飛び込んできた言葉は、しっかりとした、男性の声。

―――誰が?何を?


″かいじゅを……ら、あなたは後悔してるんですか…?″


―――え?何が、かい…じゅ?



″わたくしには無理です。………しまったから……″

″……それも運命…″



会話が終わったのか、その後は静寂が広がった。


光輝は感じている。

『この人たち、知ってる……』

だが、名前も顔も浮かばない。

光輝の魂が訴える。“忘れてはいけない”のだと。



それが何故かは分からないが、それでも、ちゃんと“再会”出来るのを知っているから焦りはない。




呼吸が戻る。

空になった筈の肺に、入り込んだ空気に違和感はない。

まるで息をするのを忘れていたのを、忘れたように。






光が戻りつつある視界に、一瞬見えた少女の口が、こう、動く。











″かけらを探して″


聴こえなかった、でも、確かに聴いた。



光が溢れる。


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