七つの世界のかけら

□第二章
2ページ/10ページ


そう、その男は疑問に思っていたのだ。


ラングルドが、自分の元に来た理由。

この餓鬼の事ではない、それは偶然に過ぎない。

では、何故か?

ラングルドとは旧知の仲だが、わざわざ遠方から訪ねて来る程の仲ではない。

そして、ラングルドが来る前、光輝が最初の暴走の前に、感じた気配。



これは偶然か?


「それは……」

言葉に詰まり、言い淀んだラングルドは、ただ、陛下のご命令と、呟き、この話しにの終わりを告げた。


つまり、命令で来た先には、キーファがおり、偶然で光輝がいた。


さて、それは偶然か、必然か?


「分かった、俺からあの変態に聞きゃーいいんだな」


そして、この話しは完全に終了した。


ふたりの間に妙な空気が流れ、光輝は居心地の悪さを感じた。

ふたりは知り合いだと分かるが、何か訳があるのか、あまり仲は良くないようだ。


―――それを聞いてもいいのかな?

今の空気に馴れず、多少もじもじしながらも、好奇心には勝てず、聞いてみる。


「あの……」


だが、それは続けられる事はなかった。


「着きました、あの水場から移動しましょう」


偶然か、ラングルドがふたりに声をかけ、光輝の問いかけをかき消した。







そこには、薄い緑の色を放つ木々に囲まれ、時折ゆらゆらと太陽の光が届く、まさに清らかな泉だった。


「澄んだ水場でないと、きちんと発動しないんです」と、話ながら、ラングルドは、先程見せてくれた石を投げ入れて。


と、―――



コォっと小さな音と共に、溢れんばかりの七色の光が泉を包み込んだ。


「さぁ、行きましょう。行き先は私が思い浮かべますから、おふたりは何も考えずに光に身を任せてください」


と、身を浸すように、ラングルドは泉に潜り込んだ。

「さ。行くぞ」
と、声をかけ、キーファが後に続く。

「え?」
だが、光輝は多少の戸惑いがある。


光が溢れた瞬間、光輝の心臓は壊れそうな程の鼓動を打った。
息が上手く出来ない息苦しさで、体が強張り、体が思うように動かない。


なんだろう、嫌な感じがする―――

ヒューヒューと、掠れる息が、ますます光輝を追い詰める。

が…


ここに居ても始まらないのは解っている。

軋る関節を無理矢理動かし、光輝は仕方なく、光に身を任せる事にした。



次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ