玩具友達
□甘い声
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今、現在の状況を何とか打開したいと考えてる少年、駿輔(シュンスケ)17歳。
だがそれは、かなりの困難を伴うだろう。
なんせ、今はベッドの上、加え、悪友に押し倒されている状態。
そして彼はヤル気満々。
「……あー……止めよう?」
などと、間抜けな声を出してみても、悪友である知己(トモキ)は、止めるどころか、何で?と、あからさまに不快な顔。
「そっちが誘ったんじゃないか?それを止めるのは俺からか?」
そうだっけ?
と、薄ら笑いで惚けてみても、それは変えようのない事実だ。
話しはほんの数分前に遡る。
知己は、駿輔と彼の部屋で呑んでいた。
未成年にも関わらず、酒の好きなふたりは、よくこうして駿輔の部屋で酒盛りをしている。
彼は片親で、父親が出張が多いので、なにかあるとこうして駿輔の部屋で、大人には知られてはいけない事をしていた。
そんなふたりが、週明けまでに親がいない状況で、何もない訳がなかった。
無論、今回も酒盛りが始まった。
父親が放任なのか、片親で申し訳ないのか、酒を呑んでいるのに気がついてはいるだろうが、その辺りに対しての小言は一切なかった。
それを良い事に、こうしてまた、酒を酌み交わす。
今回は、以前父親が買ったままで放置されていた、芋焼酎がメインだ。
ある程度、酔いが回って、知己が口にした事が、そもそもの発端だろう。
「駿輔ってカノジョ、いた事ある?」
ぐっと息を飲み込んで、ハァ?と間抜けな声で知己を見上げる。
「ンだよ、いきなり」
恥ずかしながら、駿輔の彼女いない歴は、年齢と一緒だ。
無論、もてない訳ではない。
女友達はたくさんいるが、恋愛にはとんと発展しないのだ。
「…お前はどうなんだよ」
質問に質問で返したが。
「いるよ」と、あっさり返ってきた。
『あるよ』ではなく『いるよ』の現在進行形。
チッと軽く舌打ちをし、手元の焼酎を煽る駿輔。
コイツがもてるのは知ってるが…と、半ば自棄のように、次々と酒を飲み干す。
「いるよって、こんなトコで酒呑んでてい〜のかよ、カノジョ、ほったらかしかよ」
「ん〜?」
気のない返事をして、知己はちびちびと呑み続ける。
その姿が余裕と感じたか、駿輔はムッとして、更に酒を煽る。
「おいおい、今日はやたらとペース速いンじゃね?」
大丈夫かよ、と言いつつ、この状況を楽しんでいる知己は、あからさまに酔いの回った駿輔で遊び出す。
「動揺?もしかしてカノジョ、いた事なかった?」
カラカラと笑いながら、まさかな〜と、楽し気に呑み続けている。
「ンな訳…!」
あるか、と、言葉を続けたかったが、それは出てこなかった。
じっと駿輔を見詰める知己の瞳が、まるて心まで見透かすように、瞬く。
「じゃ、セックスもした事あるんだ」
抑揚のない言葉と裏腹な、位抜くように見詰める知己。
駿輔は言葉が出てこない。
知己は、自分の薄い茶の瞳が、他人にどのような影響を与えるか、重々承知の上で、時折こうして、“目で語る”みたいな事をする。
その時は、言葉の感情を付けない方がいい。
それも全て計算の内。
そして、駿輔も例外ではなく、この瞳に見詰められるのが弱いのだ。
そんな知己から、逃げるように視線を外し、溜め息にも似た、掠れた声で呟く。
「…ンな事、試したら判るだろ!」
妙に艶の含んだ声で誘ったのだ、それは知己からしてみれば、思うつぼだったのだ。
そして、現在の至る。