七つの世界のかけら
□序章
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ふと、何だか違和感を感じた。
墜ちながら固く閉じられた瞼を恐る恐る開けてみた。
それは言葉にならない光景だった。
確かに光輝は墜ちている、それは間違いないのだが、落下の速度が遅い。
闇の中、フワフワと降りていく、多分それが一番正しい表現。
非現実な事柄に、光輝の思考は停止状態が続く。
考えようとしても、それを拒否するように、ぐるぐると考えた事が渦を巻く。
―――何でだ?
―――何事!?
―――何故!!??
光輝の冷静さを取り戻したのは、ある声が頭に響いたからだ。
(こっちに来たか)
低く、耳障りのいい甘い声。
それが覚醒の合図の様に、光輝は我を取り戻した。
―――誰?
誰の声だろう、懐かしい様な不思議な感覚が、心臓の辺りを中心に、ふわりと広がった。
「誰?」
声に出して問いかけるが、答えは返ってくる気配がない。
相変わらず空気に乗るように、ゆっくりと光輝の体は底のない闇へと吸い込まれて行く。