七つの世界のかけら
□序章
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はじまりのかけら
朝はいつも変わらずバたつくものだ。
特に彼は他の同年代に比べると、忙しいものだ。
育ち盛りには朝食が必要だ、ましてや彼のように身長にコンプレックスを抱えていては、バランスの取れた食事は必須である。
加え、帰宅に合わせての洗濯機のタイマー設定や、冷蔵庫や生活必需品の確認し、買い足し等の確認。
簡単な部屋の掃除などを加えると、家から10分かからないで登校出来たとしても、2時間前には起床せねばならない。
全ての準備を終え、弁当を鞄に押し込み、簡素にしつらえた両親の写真が飾られた祭壇へゆっくりと手を合わせる。
―――父さん、母さん。いってきます。
毎朝の決まり事を全て終え、初めて学校へ向かう。
彼、田原光輝は天涯孤独だ。
母親は光輝がまだ幼い頃に亡くなった。
体の弱かった母は、命と引き換える様に光輝を産み落とした。
母と暮らしたのは1年なかった。ほぼ病院暮らしだったからだ。
父は去年に亡くなった。光輝を育てる為の無理が祟ったのだろうか、病気で患う事なくポックリ逝った。
親戚のいない光輝は、両親が遺してくれた少量の財産で細々と暮らしている。
それでも、そこそこの頭の良さを持っているのと、父親の親友の援助で高校には通わせて貰えた。
他人に感謝を忘れない、そして芯の強い少年がここにいた。