よろずBook

□稲妻11
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「鬼道。」





「ん?」





「えっ、とー…ゴ、ご…」





「ゴ?」





「ご、五目ご飯って美味しいよなっ!!」





「そうだな、美味いと思うぞ。」





そう言って本に視線を落としてしまう鬼道に円堂は小さくため息をついた。





「(また言えなかった…。)」





鬼道が常につけているゴーグル。前々から円堂は鬼道の素顔を見てみたいと思っていた。ひょんな事から両想いな事が分かり、付き合い始めてから3ヶ月。休みの日にはこうして鬼道の家に遊びに来たりもしている。だが一緒にいる時間が増えても、一度も鬼道の素顔が見れる事は無かった。





「一言で済むのにな……」





『ゴーグルを外してみてくれないか』
その一言さえ言えば、拒否されても理由を聞ける。鬼道が何か理由があって素顔を隠しているなら、自分は無理に素顔を見る必要は無い。円堂が一人でもやもやとしていると、鬼道がしおりを挟み本を閉じた。ゴーグル越しの視線が円堂に向けられる。





「どうした、そんな深刻そうな顔をして。」





「え?な、何でも無いっ!」





「円堂は嘘をつけないタイプだな。」





「何でも無いんだってば!」





「……俺にも言えないような事か?」





二人の距離が近くなる。鬼道が円堂の隣に座ったからだ。少し悲しそうな鬼道の声に胸がつまる。一言、言えば良いのだ。何をそんなに悩む必要があるのだろう。自分は鬼道を悲しませたい訳じゃない。円堂は決心を固め、鬼道の様子を伺いながら口を開いた。





「その…鬼道、お前いつもゴーグルつけてるだろ?それ、一度外してみてくれないか?いや、その、嫌なら良いんだけど……」





「別に構わない。円堂になら、見せても良いと思っていたしな。」





鬼道は優しく笑みを浮かべながら円堂の頭を撫でた。円堂はアッサリと返ってきた返事に脱力しつつも、自分の頭を撫でる手に頬を赤くする。





「俺の目は人とは違う。」





円堂の頭を撫でていた手を頭の後ろに持っていき、ゴーグルは外された。






「変だと思うだろうが…「思わない。」」





自嘲気味に言った言葉を円堂は否定した。





「すごく、キレイだ。」





嘘偽りの無い言葉に鬼道は救われたような気がした。今まで溜め込んでいた何かが解かされていくような感覚。鬼道の瞳から涙が溢れた。





「…ありがとう、円堂。」





自分が流した涙にあたふたと慌てる円堂を抱き寄せて呟く。円堂もしばらく硬直した後、遠慮がちに鬼道の髪を撫でた。








あなたの言葉で
(俺は救われた)






end.



■■■■■■■■
鬼円ファンなら一度は書きたいゴーグル話、反省はしつつ後悔はしてません。


鬼道さんのゴーグルを外せるのは円堂君だけですよ、きっと。
もっと精進しないと……。




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