よろずBook

□不明
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非常に奇妙なことだ。六年もの間己の恋情に気づかず、気が付いた時にはもう手遅れ。また彼と会える可能性は0に等しい。



中学二年生の春、聞く気の無くなった授業が右から左へ通り過ぎていく。六は複雑な心情をシャーペンにのせるかのごとくノートの端っこにぐるぐるとらくがきを始めた。今は遠いMZDのことを思いながら。



正直初めて会った時のことは覚えていない。気が付いた時にはもうMZDは隣にいたのだ。毎日のように遊んで、話さない日は無く、小学校時代の自分を思い出せばそこに必ずMZDはいた。MZDは年に似合わぬ性格と物言い、読書への異常な執着から周りに変人などと言われていたが、六からすればただの本好きの同類でしかない。面白かった本を教え合い、本の感想を聞き合う。六とそれが出来たのはMZDだけだったから、自然と六はMZDとつるむようになっていた。



時には図書館や家に行き本を読んだり、時には近くの川に行き秘密基地を作ったり虫を採ったりびしょぬれになったり、とにかくMZDは六にとって近い存在だったのである。それが、近くにいすぎたから今まで気づかなかったのかもしれない。同性だという事はこの際引いておく、普通なら悩むはずなのだがすんなりと受け入れてしまったので仕方がない。





ちょうどノートの端が真っ黒になる頃、単調なチャイムの音が学校中に響いた。
途端に騒がしくなるクラスの中、すっきりしない気持ちのまま六は読みかけの本を開いた。




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