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□いってみようか。
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不二は困っていた。
手塚も困っていた。
菊丸も困っていた。
大石も困っていた。
河村も困っていた。
越前も困っていた。
桃城も困っていた。
海堂も困っていた。
オレも困っていた。
とりあえずの、話。
全員、困っていた。
今日はバレンタインデー。
色恋に興味がある女なら外せない一大イベントの日。
人間、顔ではないと言いながらもやはり面の皮一枚。重要なものなのだと実感する日でもある。
それだから困っているのである。
一応我が男子硬式テニス部は美形ぞろいと来ている。
その為にこの日は部室に某アイドル事務所では無いんだと思うくらい女子が殺到する。
まぁ氷帝に比べれば大分マシだとは思うが。
だが女子がこんなに殺到していれば一大事にも程がある、とオレは解釈している。
(これは裏の状況を知っている者だけが知っている情報だが、テニス部の非レギュラーメンバーに頼めばレギュラーに渡して貰えると言う噂が流れている。
その噂の発信源はどうやら二年あたりが流しているようだ。
何処の誰か、と言うことはもう調査済みだがな。)
朝練前の部室は地獄と言っていい。
女子が押し合い圧し合い大変な状況を作り出している。
とりあえずオレは学校についたら部室の裏側に周って自称裏口の窓を開けて入った。
するとそこにはレギュラー全員がそろっている。
…一番遅いのはオレか。
「遅いぞ乾。グラウンド20週…いや、今は良いか。」
手塚が眼鏡を窓から差し込む光で逆反射させた。
俺とまでは行かないが眼が見えない。