「アールト姫。今日どっか寄って帰ろうぜ」
後ろからガシッと抱きしめられ、バランスを崩しそうになる。
「何するんだよ!危ないだろ」
文句を言いつつも、ドキドキと大きな音を立てる心臓に気づかれやしないかとヒヤヒヤした。
仕方ないこととはいえ、人の気も知らないで、と勝手なことを思う。
ミハエルからしてみればいつも通りに振舞っているだけなのだろう。
でも自分からしてみれば心臓に悪い。
意識するようになってから気づいたことだけれど、ミハエルはスキンシップが多い。
育った環境が違うのだから当たり前のことだ。
それに自分の育った環境が特別だという自覚もある。
だからといって慣れるものでもなかったけれど。
「買いたい物もあるしさ。付き合ってよ。どうせ暇だろ?」
そんなアルトの様子を、ミハエルは当然のことながら意に介した様子もない。
耳元で囁かれる声がくすぐったくもあり、またあの時のことを思い出して恥ずかしくもあり、必死に抵抗して見せた。
「わかった!わかったから離れろ」
それが通じたのか、なんとかミハエルを引き剥がすことに成功する。
そこでようやくミハエルの顔を見てからかわれたことに気づいた。
「ハハッ、アルト姫はウブだなぁ」
「テメェ!」
「ほら行こうぜ。こんなところでグズグズしてたら遅くなっちまう」
 いちいちそうやって反応が返ってくるのが面白くて、毎回からかってくるのだとはアルトは知る由もなかった。





………という内容のものが、瑠璃が忘れなければ春コミに出るはずでした。

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