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□13 Death(死神)
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全てが繰り返しの世界。
僕はずっと、死をやり直し続けている。

僕には未来を見る力があった。
予知能力と呼ばれるもの。
人の将来を見る力。自分で望んで手に入れた力ではない。
気付いた時には、僕には人の未来が見えていた。
そして、その人がいつ・どうやって死んでいくのかも・・・・・・。

人の死に関することは、絶対に話してはいけないことだった。
人の死は動かしてはいけない。動かせば、未来が変わる。
死ぬはずの人間が死ななかったら、代わりに他の誰かが死ぬ。
それは頭で分かっていた。だけど僕は・・・・・・。

人の死を、動かした。

たった一人、大切な妻が死ぬなんて、耐えられなかった。
だから僕は、妻に話してしまった。

午後6時42分、前方不注意のトラックにはねられ即死。

もちろん彼女は助かった。だけど僕にはすぐに罰がやってきた。

翌日、僕は死んだ。
電車事故に巻き込まれ、覚えてるのは強い衝撃。
それだけだった。
でも僕は終わらない。
気付けば僕は、道路の真ん中に立っている。
そして・・・・・・乗用車にはねられ即死。
しかしまだ終わらない。
次は飛行機事故で死亡、次は溺死、次は殺された・・・・・・。

そう、妻を助けたひずみが僕に来たのだ。
僕が死をやり直す限り、世界の時間と人は、歪みもなく流れていく。
絡み合った世界の糸は、こういうふうに落ち着いたのだ。

これから僕は再生のない、死をやり直し続けるという、永遠の苦しみを背負って生きていく。
だけど妻がこの世界で生きてくれるのなら、これでいいと思う。
愛する者が生きている世界を思うだけで、僕の胸の苦しみは和らいでいくのだから・・・・・・。

僕はふわりと笑う。
これでいいんだ。

そして僕は・・・・・・。





『13 Death』

死神

正位置は停止、損失。
逆位置は死からの再生、やり直し。

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