Asaheim2

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彼女の言葉に八雲は大きく目を開いた。

僕じゃないとダメだった理由……?

悶々と考える。
何か理由があるのなら、その理由はこの先見つかるのだろうか?
その疑問を、芽衣の前で口にする。
彼女は笑って答えた。
「きっと見つかりますよ。」と一言……。

芽衣の笑顔が懐かしい。あの日出会った時と変わっていない。忘れることはなかった。きっとあれが自分にとっての初恋だったから。
会いたいと願っていたその相手が今、ここにいる……。

「……本当に覚えてないんだな。昔、君は僕にさっきと全く同じことを言った。」

芽衣の瞳が俯いてしまう。
しまった!!……と八雲が感じた瞬間、芽衣は口を開いた。

「はい、すいません……。交通事故にあったのは、小学生の時でした。横断歩道を渡ろうとしてた私に、自動車が突っ込んできたそうです。運転手の方はその時、心臓発作ですでに亡くなられていたそうです。はねられた私の体は、宙に舞うくらい、酷い事故だったと聞いてます。」

八雲は目の前の芽衣を見る。
そんな大きい事故だったにも関わらず、芽衣には後遺症ひとつ見られない。
ましてや死んでいたかもしれないのに……。

八雲の思ったことに気づいたのか、彼女は言葉を続けた。

「八雲先輩、驚いてるんでしょう?私がピンピンしてるから。私、実はその交通事故で一度死んだんです……。」

「……死んだ……って!?」

とっさに八雲はソファーから立ち上がる。
それならば彼女はまさか……!?でも、晴香にも芽衣の姿は見えた。
それはどう説明する……?

彼の反応にクスクス笑う彼女。

「八雲先輩、残念だけど今の私は死人じゃありませんよ。私は確かに死にました。けど、救急車の中で2分だけ……。私、生き返ったんです。」

ドサリと八雲の体がソファーに沈んだ。そのまま頭を抱えて呟く。「そういうことか」……と。
そう、芽衣は一度死に、再び生き返った。でもその出来事は、芽衣に普通の生活をもたらさなかった。
彼女を、『見える』体質へと変えたのだ。
死んだ人の姿も、その人の記憶をも。





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