「白きドラゴン一族に魔法を与えられた者償に呪いを受けん……。伝承の一説よ。」
「つまり彼女のそれは……呪いだ。村の者たちは、彼女の呪いをすでに知っている。」
こくりとリリィが頷く。
俺は信じられなくて、彼女の腕に触れようとした。その瞬間、リリィは腕を引っ込めて鋭く叫んだ。
「ダメッ!!直接触らないで!!」
空気がぴりっと震える。
俺を睨みつけたリリィが、次の瞬間悲しそうな表情を浮かべた。
「人間が直接触ると、黒文病を発症するわ。そして……数時間で死に至る。」
包帯を巻きなおしながらリリィが言った。
カイネやエミールも息をのみ、驚いている。
顔を上げたリリィは、俺を見て微笑んだ。
「覚悟はしてたからいいの。ニーアの手助けができるんだったら、呪いを受けるのなんて平気よ。」
懸命に笑う彼女が、痛々しく見えた。
彼女をこんなふうにしてしまったのは……俺のせい。
5年前のあの日、無力な姿を見せたから。
もっと俺が強かったら……っ!!
みんながいるのに、俺はリリィを抱きしめた。
きつくきつく、俺から逃れられないくらいに。
「戦いが終わって、ヨナを取り戻したら、お前の呪いを解く方法を探し出す。全部終わったら……俺と一緒に住もう。俺の家で……。」
優しく囁いた。
リリィが俺に身を任せる。それは彼女の肯定の態度。
「……それって、全部終わったらニーアさんとリリィさんは結婚するってことですか?」
突然上がるエミールの声。
彼女を抱きしめたまま、俺は言った。
「ああ、そのつもりだが?」
「そんな………だ、駄目ですぅぅぅぅーっ!!」
そう叫びながら、エミールは門を飛び出して行った。
カイネがため息をつき、呟いた。
「子供には刺激が強すぎたみたいだな……。」
そのままエミールのあとを追い、村の外へと足を向ける。
周りを見ると、呆れたシロと二人で微笑むポポルさんとデボルさん。そして、真っ赤になったリリィ。
「若いとは素晴らしいものだなー……。」
「ニーアは昔から、ストレートよね。」
「ああ、全くだな。」
油断して腕の力を緩めると、するりと抜ける彼女の体。
「そ、それじゃあ私もカイネさんたちのとこに行くね!!」
白いドラゴンを連れ、俺に背を向けたリリィ。
とっさにリリィの腕を掴み、体を引き寄せる。
ビクリとリリィが体を震わせたが、俺は気にしなかった。
それよりも、俺は多少強引にリリィの唇を奪う。
柔らかく、ハチミツのように甘いリリィの唇。
「約束と、誓いのキス……な。」
リリィの耳元で囁く。
彼女は耳まで真っ赤になったが、嬉しそうに頷いた。
近くでエミールの悲鳴が聞こえたような気がしたけど、俺の気のせいだろうか……?
約束と誓いのキス*