Asaheim2

□アナタノタメニ
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リリィを俺の家へ連れ帰った翌日、彼女が目覚めたのは夕方になってからだった。
あの白いドラゴンは、ずっとリリィについていた。
まるでアリューを主人として慕っている……そんな風にも見える。
ポポルさんが言っていたことが本当なら、リリィは……

魔法が使える?

部屋に入ると、ベッドの上に座ったリリィ
が微笑みを浮かべていた。
そばではあのドラゴンが丸くなって眠っている。
なんて声をかければいいのか分からなくて、俺は黙ったままだった。

「……身長、伸びたね、ニーア。それに、とってもかっこよくなった……。」

「……リリィだって、綺麗になった。」

とっさに出た言葉。リリィの瞳が、さらにやわらかくなった。

「ニーア、ごめんね。この3年間、私はドラゴンたちと一緒にいた。あの日、私は自分の無力さを感じた。このままじゃ、ニーアについて行っても足手まといになるだけ……そう思った私は、戦える力を求めて旅だったの。そして……魔法という力を手に入れた。ドラゴンたちに認められ、使いこなすまでに時間がかかったけど……。」

ふわりと笑った彼女。俺はとっさにリリィを抱きしめていた。

「ニーア……?」

「馬鹿だよリリィは。そんな力なくたって、足手まといにはならないのに。お前がいてくれるだけで、俺は救われるんだ。お前がいなかった3年間は、本当に苦しかった……。」

腕に力を込めた。リリィのぬくもりを感じる。
優しい手が俺の背中に回されて、ドキンと心臓が音を立てた。

「ごめんね、ニーア。でも私はちゃんとニーアのところに帰ってきた。これからはずっと一緒にいるよ。世界が、どんな結果になろうとも……。私はニーアと一緒に、ヨナちゃんやカイネさんを助ける。」

体を離し、俺はリリィの唇をなぞった。
最後にキスしたのは、3年前。彼女がいなくなる前日の夜。

「リリィ……。」

名前を呼んだだけで、リリィが目を閉じた。
そっと重ねた唇。それはとっても甘い甘いキスだった……。



アナタノタメニ




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