Asaheim2

□アナタノタメニ
2ページ/3ページ



「急げニーア!!マモノかもしれんのだぞっ!?」

「そんなことは分かってる!!」

あの頃使っていた剣よりも一回り大きいものを持って、俺は図書館へと走った。
先頭にいるシロが俺をせかし、後ろではデボルさんが血相を変えてついて来ていた。

乱暴に扉を開け、俺は剣を引き抜き図書館の中に飛び込んだ。
まず最初に目についたのは、驚いた表情のポポルさん。
そして………真っ白いドラゴン。気品溢れていて、とてもマモノには見えなかった。

「これは……」

シロも戸惑いを隠せないようだった。
ドラゴンは俺達を襲うことなく、ただ俺達を見つめるだけ。
不意にドラゴンが動き、背中から何かを優しくくわえ、俺の前へ差し出した。
剣を下ろし、とっさに出した両腕に心地よい重みがやってくる。
それを見て、俺は言葉を失った。
紛れもなく、それはリリィだったのだから。

いなくなった時よりもずいぶん成長していて、とても美しかった。
昔は少し短めだった赤色の髪の毛。
今では長くなっていて、胸がドキドキした。
艶やかな唇。
綺麗にそろっている長いまつげ。
雪のように白い肌。
これは本当に……リリィ?

目の前にいる大きなドラゴンが、やがて小さな姿となる。同時にシロが口を開いた。

「そういえば、こんな話を聞いたことがある。西の果てに、白きドラゴン一族の住まう森がある……と。」

シロに続き、今度はポポルさんが言った。

「そのドラゴン一族の長であるドラゴンに認められし者、魔法の力を手に入れる……。ずいぶん昔に、そんな言い伝えを聞いたことがあったわ……。」

細められたポポルさんの目が、腕の中にいるリリィへとうつった。

まさか………。

俺は息を飲む。
芽衣はこの3年間、そのドラゴンたちの元にいたのか……?
ヒュウと激しい風が俺達を包み込むのだった。



*
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ