Asaheim2

□ダマスクローズ
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「どうですか?気にいってもらえるといいんですけど。このバラはダマスクローズといって、バラの中で一番の高級品なんです。」

「そう、なんですか?」

花束を受け取る手に、変な力がこもってしまう。
まじまじと花を見つめる芽衣。
確かに花の色は美しいし、形も大きさも見事であった。
高級品だと言われても、納得できてしまった。

「とっても綺麗……。司郎さん、ありがとう。でも……。」

芽衣はそっと、ダマスクローズの花束をテーブルの上に置いて宮田へと体を寄せる。

「私が一番うれしいのは、司郎さんが私を愛してくれていること。例え高級な花束がなくても、私は司郎さんがいてくれればうれしいの。」

そう言って、彼女は宮田の胸に顔を埋めた。
宮田は芽衣の髪を優しく撫で、ダマスクローズの花束を見てから言う。

「全く、欲のない子だな。もっとワガママを言ってもいいのに。でも、そんな君だからこそ、愛しいって思う……。」

髪をひとふさ手にとり、チュッと口づける。
彼女の髪から、ふわっとダマスクローズの香りがしたような気がした。



ダマスクローズ




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