ある日私は、検事局の一室で彼女たちの会話を聞いてしまった。
彼女たちとは私の妹弟子・冥と、私の婚約者・芽衣のこと。
検事である二人は、一つの事件がきっかけになって知り合い、いつの間にか友好を深めていた。
「……うーん、そうなんだけど、やっぱりMだと思う。」
部屋に入るなり聞こえてきた怪しい会話に、私は持っていたコーヒーカップを落としそうになった。
芽衣が……M。
私は夜の彼女の姿を想像して、それは妥当かもしれないと思った。
「そうかしら?私にはどうみたってSに見えるわ。」
そう答えた冥の発言で、眉間のシワが深くなる。
芽衣が……S!?
いや、ありえないことではないかもしれない。
彼女は時々、積極的になって、激しいくらいまでに私を攻め立てるときがある。
それはもう、私の体力が続かないくらいに。
冥の言う通り芽衣は、本当はSなのか……?
私が考え込んでいると、二人の会話は私の話になる。
「もちろん怜侍はLよね。」
「当たり前だよ冥ちゃん。」
………えっ……える!?
私がL……だと?ム、ムゥ……。
LとはSMと違うのか?
もしかしてSとMが半分ずつなことをLと表現するのだろうか?
それならば私は否定する!!
私は常に、芽衣を前にするとSだ!!
「冥、それは違うな。」
「あら怜侍。あなたLじゃないの?なら、決め直すしかないんじゃないかしら?婚約パーティーの衣装。」
………ム?今、何だと?
「あ、れ?怜侍はいつも、服のサイズはLじゃなかったっけ?私のカンチガイ?」
芽衣の困った顔を見て、私は固まってしまった。
SとMって……服のサイズのことだったのかっ!!
「い、いや……。Lでよかったな。気にしないでくれ……。」
内心焦りながらコーヒーカップに口をつけ、席につく。
二人は不思議そうな顔をしていたが、冥が何かに気づいたように笑った。
「……あぁ、分かったわ。そうよね、怜侍は狩魔の教えを受けた人間。好きな子を前にしたら、必然的にSになるわよねぇ。」
「………っ!?」
顔を真っ赤にする私を見て、冥が勝ち誇ったように笑う。
その横で婚約者の君は、「えっ?えっ?」とワケが分かってなさそうな顔をしている。
冥の笑い声を聞きながら、カンチガイを起こしてしまった自分に恥じる私であった……。
SMカンチガイ×