「マリ・キュリー、元気かな……?」
そう呟いた僕を、ナポレオンは見逃さなかった。
ニヤリと笑ったあと、彼は言う。
「お前やっぱり、マリ・キュリーにお熱だったのか?」と。
僕は慌てて否定した。
確かにマリ・キュリーはとても可愛くて魅力的だった。
でも僕にはもっと、気になる人がいるかのだ。
ナポレオンはそのことを知らない。
一緒につるんでる一休やフロイトたちもきっと、そのことは知らないだろう……。
僕がひたすら隠してるから。
「なんだあ、そうなのかよ。つまんねーな!」
ナポレオンが足を投げ出してソファーに座る。
その横で何か考えこんでいたフロイトが、ふいに口を開いた。
「マリ・キュリーじゃないとなると、もしや芽衣か?」
「ぶっ……!」
僕はナイチンゲールが淹れてくれた紅茶を盛大に吹き出す。
フロイトは口の端を上げて笑うと呟いた。
「本当に史郎は分かりやすい」と。
この話題に、エリザベスやナイチンゲールたちも食いついてくる。
「なになに!?史郎って芽衣のことが好きだったの?」
「そういえば芽衣は?」
「図書館に寄ってから来るって。」
ナイチンゲールがそう言ったのを聞いたナポレオンは、僕の首根っこを掴むと遊戯室からぽいっと外に出した。
「何するんだナポレオン!」
「迎えに行ってやれよ、芽衣を。
ナポレオン・ボナパルト様が呼んでるっていう理由つけてな!」
バタンとドアが閉まった。
きっと中では僕と芽衣の話題で盛り上がっているのだろう。
仕方なく、僕は図書館へと歩き出す。
心の中で芽衣に謝りながら……。
しばらく行くと、前からやってくる彼女を見つけた。
僕はおおきく手を振って、芽衣のことを呼ぶ。
立ち止まった彼女が小さく呟いた。
「カイ…………?」
聞きなれないその名前。
その名前を聞くと、なぜかイライラして吐き気がした。
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