Asaheim2

□#01
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そこはクローン技術で甦った偉人だらけの学園だった。セントクレイオ……その中で僕だけが、たった一人の人間。
最初はそうだったんだ。でも僕だけが普通の人間だけじゃなくなった。
僕が来て、しばらくしてから彼女が来た。

「みなさん、このクラスに新しい生徒が増えます。彼女は神矢君と同じでクローンではありませんが、特別な理由でここに転校してきました。さ、自己紹介なさい。」

先生がそう言うと、隣に立つ少女は、にっこり笑った。

「今日からお世話になります、黒川芽衣です。よろしくお願いします。」

そう名乗った少女が頭を下げる。セミロングの髪が揺れた。
黒川芽衣。彼女は僕と同じでクローンじゃなく、偉人でもない。
黒川は僕の隣の席になった。
最初はお互い緊張していたけれど、徐々に仲良くなっていった。
それは黒川が僕と同類だったからかもしれない。
クローンだらけの中に放り込まれた僕だったが、僕はもう、一人じゃないんだ。
そんな安心感が生まれていた。
しばらくたって、黒川のことを芽衣と呼べるようになった頃、僕には変な感情が生まれていた。

ちょうどその頃だったんだ。マリ・キュリーが、音楽の学校に行ったのは。
その本当の意味を知るのは、もっと先のことだった。
組合わさっていた運命の歯車が、回り出した……。


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