Asaheim2

□惨劇の彼方に
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そう言うと、繋がれた手に力がこめられた。
そのまま一緒に部屋へ入る。
先に部屋へ入っていたエミールやシロが、ポツンと佇む割れた水槽を見つめていた。
下には「実験8号」と書かれていて、6号や7号とは違う待遇だったことが分かる。
机には、研究員の手記と資料が置かれていた。

「……なんとなく、懐かしい感じがします。」

ポツリとつぶやくエミールが、ガラスの水槽を指でなぞった。
ニーアが研究員の手記を開く。

「……どうやら実験8号っていうのは、6号と7号の長所を取り入れてここで作ったものらしいな。6号とは違い、完璧な人間の姿をしていて、強大な魔力を持つ最強の兵器……だそうだ。」

リリィはニーアの話を聞きながら、水槽を見つめていた。
頭に声が蘇る。誰の声かは分からないが、名前を呼んでいる。
リリィ……と。そして8号と。

「……先に進みましょう。8号に関しても気になりますが、まずは石化解除の方法を知るのが先です!」

エミールが言う。その場にいた全員が彼の意見に同意した。
ニーアたちは隠し部屋を出て、先に進んだ。
その先には……人間じゃないものが張り付けにされていた。

実験6号。

強大な魔力を保持してはいるが、暴走した失敗作。

6号を見て、エミールは全てを思い出した。今目の前にいる化け物が、自分の姉であることを。
そして……自分の両目がなぜ石化の能力を持っているのか……も。

エミールは迷わず6号に飛び込む決意をする。
もしも姉を取り込めることができれば、力を得られる。カイネも助けられるし、自分の目も治る。
でももし、自分が姉に負けたら……。

「ニーアさん、シロ、リリィさん。もし僕がお姉さんに負けたら……その時はお姉さん共々、僕を殺してくださいね。」

ニーアたちが制止するのも聞かず、エミールは6号へ飛び込んだ。

「エミール………っ!!」

ニーアが叫んだ瞬間、リリィの記憶に電流のようなものが走った。







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