ヨナがさらわれて5年。
この5年の間に、村も、ニーアも変わってしまった。
ニーアはあまり人前で笑わなくなった。どこか影があり、現実を冷めた目で見つめている。
けれどもマモノに対しては攻撃的になり、言動も乱暴。
今だって……。
リリィは大きな剣を振り回し、全てのマモノを倒したニーアを見つめていた。
塵となったマモノの残骸が、ニーアの髪を揺らす。同時に声がかけられた。
「行くぞ、リリィ。この平原を抜ければエミールの屋敷だ。」
石化を解く方法の手がかりを掴んだと、手紙をくれたエミール。
リリィたちは、カイネの石化を解くためにエミールの屋敷へ向かう途中だった。
ニーアのあとを追いかけようとするが、うまく足がすすまない。
まるで足がエミールの屋敷に行くのを嫌がってるみたいだった。
「どうしたんだ?リリィ……。」
「なんだか顔色がすぐれぬな。」
ニーアとシロが心配して声をかけるが、リリィは笑ってみせた。
内心、どうして自分がエミールの屋敷に対してこんなに嫌悪感を抱くのか、不思議でならなかったけど……。
彼の屋敷に着き、エミールから屋敷の地下に広がる研究施設のことを聞く。
中庭が入口だった。地下の施設に足を踏み入れた瞬間、何かがフラッシュバックした。
それはエミールも同じだったみたいで……。リリィの隣で頭を抱えるエミール。
「リリィ!エミール!どうした!?」
「何でもない……です。大丈夫ですよ。」
「私も大丈夫。ちょっと頭痛がしただけだし……。」
頭を振って答えた。
どうしてだろう?ここはすごく懐かしい感じがする……。
同時に嫌な思いが募る。
奥に進んでいくにつれ、置かれている機械が複雑なものになっていく。
途中で手に入れた資料を眺めるニーアとシロ。そこには実験6号、7号というものについて書かれていた。
6号についての資料には、写真が貼付けてあった。どこか、エミールに似た女の子……。
「なんとなく、エミールに似ているな。」
「我もそう思う。」
資料はとこどころ劣化していて、読めるものじゃなかった。
フッとニーアは資料から目をそらすと、再び歩き始めた。
「なかなか石化解除についての資料は見当たらないな。」
苦笑しながら本棚に並べてあった本を適当に抜いた。
カチャン……とロックが外れる音。ニーアが眉をひそめた瞬間、本棚が動き隠し部屋が現れる。
みんな顔を見合わせたが、先にニーアが入った。次にシロ、エミール……。リリィはなぜか、ここには入りたくなかった。なぜ……?
「リリィ、はぐれると危ないぞ?」
「あ、ごめんなさい。」
最初に入ったはずのニーアが、入口から顔を覗かせる。アリューは彼の元へ駆け寄った。
「何か心配事か?それとも怖いのか?」
手が絡められる。
優しいニーアの眼差しに、リリィの心が落ち着く。
「ううん。大丈夫。ニーアがいてくれるから……。」
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