Asaheim2

□惨劇の彼方に
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ヨナがさらわれて5年。
この5年の間に、村も、ニーアも変わってしまった。

ニーアはあまり人前で笑わなくなった。どこか影があり、現実を冷めた目で見つめている。
けれどもマモノに対しては攻撃的になり、言動も乱暴。
今だって……。

リリィは大きな剣を振り回し、全てのマモノを倒したニーアを見つめていた。
塵となったマモノの残骸が、ニーアの髪を揺らす。同時に声がかけられた。

「行くぞ、リリィ。この平原を抜ければエミールの屋敷だ。」

石化を解く方法の手がかりを掴んだと、手紙をくれたエミール。
リリィたちは、カイネの石化を解くためにエミールの屋敷へ向かう途中だった。

ニーアのあとを追いかけようとするが、うまく足がすすまない。
まるで足がエミールの屋敷に行くのを嫌がってるみたいだった。

「どうしたんだ?リリィ……。」

「なんだか顔色がすぐれぬな。」

ニーアとシロが心配して声をかけるが、リリィは笑ってみせた。
内心、どうして自分がエミールの屋敷に対してこんなに嫌悪感を抱くのか、不思議でならなかったけど……。

彼の屋敷に着き、エミールから屋敷の地下に広がる研究施設のことを聞く。
中庭が入口だった。地下の施設に足を踏み入れた瞬間、何かがフラッシュバックした。
それはエミールも同じだったみたいで……。リリィの隣で頭を抱えるエミール。

「リリィ!エミール!どうした!?」

「何でもない……です。大丈夫ですよ。」

「私も大丈夫。ちょっと頭痛がしただけだし……。」

頭を振って答えた。
どうしてだろう?ここはすごく懐かしい感じがする……。
同時に嫌な思いが募る。

奥に進んでいくにつれ、置かれている機械が複雑なものになっていく。
途中で手に入れた資料を眺めるニーアとシロ。そこには実験6号、7号というものについて書かれていた。
6号についての資料には、写真が貼付けてあった。どこか、エミールに似た女の子……。

「なんとなく、エミールに似ているな。」

「我もそう思う。」

資料はとこどころ劣化していて、読めるものじゃなかった。
フッとニーアは資料から目をそらすと、再び歩き始めた。

「なかなか石化解除についての資料は見当たらないな。」

苦笑しながら本棚に並べてあった本を適当に抜いた。
カチャン……とロックが外れる音。ニーアが眉をひそめた瞬間、本棚が動き隠し部屋が現れる。
みんな顔を見合わせたが、先にニーアが入った。次にシロ、エミール……。リリィはなぜか、ここには入りたくなかった。なぜ……?

「リリィ、はぐれると危ないぞ?」

「あ、ごめんなさい。」

最初に入ったはずのニーアが、入口から顔を覗かせる。アリューは彼の元へ駆け寄った。

「何か心配事か?それとも怖いのか?」

手が絡められる。
優しいニーアの眼差しに、リリィの心が落ち着く。

「ううん。大丈夫。ニーアがいてくれるから……。」






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