夢@Asaheim

□..... 対 希望
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(チクショウ……!!!)

恭也は崖下を見る。
ちらりと見えたダンボールの山。ここから下まで、そんなに高くはない。
恭也はすぐに、一つの選択肢にたどり着いた。
何が何でも、芽衣だけはこの世界から逃がさなければならない。
彼女と、生まれてくるであろう自分の子供のためにも……。

「……芽衣、お前とはもっと一緒にいたかった。離れたくなかった。
お前を残してしまう俺を、許して欲しい。どうか俺の命を……つないでくれ。」

振り返った恭也は、彼女に何かを握らせ一気に下へと突き落とした。
ボスンと音がした瞬間、芽衣の背中に鈍い痛みが走る。
しかし、厚く積まれたダンボールのおかげで、芽衣に怪我はなかった。

「恭也……っ!!!」

芽衣が上を見上げると、そこには彼の姿はなかった。屍人の姿も……。
自分を逃がすため、恭也が囮となったらしい。
芽衣はしばらく呆然としたあと、手のひらを開いてみた。
そこには恭也のつけていたリストバンドがあったのだ。

「……恭也。」

細い声が、愛しい人の名前を呼ぶ。

「恭也……。」

言葉がかえってくるわけでもなく。
芽衣は彼のリストバンドを握りしめ、声を殺して泣いた。

「恭也、ホントは……離れたくなかったよっ!!!」

苦し紛れに吐き出された言葉を聞く者は、誰もいなかった……。


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