夢@Asaheim

□..... 対 希望
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羽生蛇村、第3日目。
霧の出ている中を二人で歩いていく。
幸いにも近くに屍人はいない。
あれから恭也と芽衣の二人は、何度か体を重ねた。
お互いのぬくもりは二人の心を癒し、正気を保たせた。
この異常な世界で、ここまで普通にいられたのは奇跡に近い。

二人で手をつないで歩いていると、恭也が足を止めた。
芽衣にはなんとなく理由が分かり、顔を伏せる。

「芽衣……。」

「分かってる。お別れ……なんでしょ?」

小さく呟かれた言葉。
彼女の表情が見えなくて、恭也は不安になった。
怒っているのだろうか……?
自分だけ、この世界にとどまろうとしていることを……。
恭也が何か言おうとした瞬間、芽衣が顔をあげた。
驚くことに、彼女は綺麗に笑っていたのだ。

「恭也……頑張って、美耶子ちゃんとの約束、守ってね……。」

顔は笑っている。けれども、手は震えていた。
なんで愛した人にこんな表情をさせなければならないんだろう。
自分が特別な存在となった時からずっと、悔やんでいたこと。
芽衣は理解を示し、こうして精一杯強がって、恭也を送り出そうとしてくれている。
そっと彼女を抱き締めて、息を吐く。

そんな時だった。
そばで屍人の雄叫びが上がったのは。
いつの間にか二人は囲まれていた。
恭也が火かき棒と、石田から奪った拳銃を構える。
屍人たちがじりじりと寄ってきて、崖に追い詰められる恭也と芽衣。
彼の背中に隠れる芽衣は、怯えていた。

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