夢@Asaheim

□only you
2ページ/2ページ


『なんだよ。お前にしちゃ朝早いじゃん。俺と一緒に登校するか?』

『そうしたいのは山々なんだけど、今から古森君を迎えにいくの。
来るかどうかは分からないけどね……。』

彼女の口から出る、『古森』という名前。
それは日に日に多くなっていった。

古森というやつは不登校ぎみで、お節介な芽衣が『古森係』として彼を迎えに行ったりしている。
そんな奴、ほっとけよ。どうせお前が世話焼いたって、古森は来ねぇーんだから。
内心そう思っていた。けど、古森の奴に変化が起きたのは、3年の2学期になってから。

髪を切った古森と一緒に登校する芽衣を見た。
すごく……楽しそうで、嬉しそうだった。古森の奴も、芽衣を見る眼差しは優しくて……。
そう、俺と同じ目をしていたんだ。古森はアイツに恋をしている……。

画面に映る芽衣が、優しく微笑んだ。
あの頃より少し綺麗になって、大人っぽくなった。

芽衣は卒業後、3流企業に就職したが、女優としてスカウトされて今に至っている。
風の噂で聞いたが、古森は現在羽ヶ崎学園の3年で、クラスの人気者らしいし、
オマケに女子からもモテるらしい。
けれども古森は、芽衣一筋を貫いている様子だった。
一度だけ二人を見たことがあるが、俺が声をかけるスキなどなくて……。

画面の芽衣を見ながら、俺は笑った。自嘲ぎみに。
どんなに好きだって気持ちを抱いても、お前にはもう、届かない。
けれどこの恋を歌にして、お前に届ける。それくらい、いいだろう?


only you



芽衣のために作った歌。
俺は在庫のチェックをしながら、小さくメロディを口ずさんだ。
誰にも聞こえないように、そっと………。



**********
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ