夢@Asaheim

□only you
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(あ……まただ……。)

俺はバイト先で流れている映像を、在庫チェックしながら見る。
画面に映っているのは、現在売り出し中のバンドのPV。
そこに何度か姿を見せている、高校の同級生。
名前を……黒川芽衣。
俺がずっと気になってた彼女。

当時、人前で歌えなかった俺を支えてくれたのが芽衣。
唯一、コイツの前だけでは、素直な自分になれた。
いつもいつも、嬉しそうに笑うんだ、俺の歌を聞いたあとは……。
そして、小さい手を叩いて言う。「ハリー、素敵だったよ」と……。

気付けば俺は、そんな芽衣に淡い恋心を抱いていた。
小突くと頬を膨らませて怒る、子供みたいなやつ。あの時間が好きだった。
アイツが転校してくるまでは……。

『芽衣、これから帰りか?それなら一緒に帰ろうぜ。』

『ごめん、ハリー。先生に頼まれて、今から古森君にプリント届けなきゃいけないんだ。』

そうやって、芽衣は笑った。
なんとなく、その時嫌な予感がしたんだ。
俺のこの、ささやかな幸せが終わってしまうんじゃないかって……。
その予感は的中した。

『芽衣、今度の日曜にライブするんだけどよ……』

『ごめんねハリー。その日は古森君と一緒に、若王子先生の特別課外に出なきゃいけないの。』

『なぁ芽衣、お前今度の休み、暇だろ?』

『あっ……その日は古森君と一緒に水族館に行くの。』


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