夢@Asaheim

□熊のゴウ
1ページ/2ページ


己の肉体を失い、熊の姿となってしまったゴウ。
彼は隠れ家の入り口で途方に暮れていた。
体が大きすぎて、家に入れないのだ。

(仕方ない。肉体が戻るまでは、縁側で過ごすしか……)

その時、背後でドサッと何かが落ちる音がする。
振り替えれば、熊の足元に転がる果物の実。
ハッとしたゴウは顔を上げた。
普段優しげな彼女の目が、大きく開かれている。

ゴウがこの隠れ家で生活し始めた時期に出会った少女。
彼が唯一心を許している存在で、ゴウにとって初めての大切な人……。
ゴウはこの少女に、芽衣という名前を与えた。

「……ゴウ……さん?」

眉間に皺を寄せてそう尋ねる芽衣。
彼女は少し特別な人間で、人の心が読めるし、治癒能力も持っている。

『芽衣……。驚かせてすまない。我無乱の術で、俺は熊になってしまった。
キヌはすでにこのことを知っている。』

芽衣の瞳を見つめて胸のうちでそう言えば、彼女は小さく息を吐いた。

「そう……だったんだ。それは大変ですね……。」

果物を拾い、かごに入れていく芽衣。ゴウも果物をくわえてかごへと持っていく。
果物を入れた瞬間、頭にあたたかいものがのった。
芽衣が熊の頭に手をのせているのだ。彼女はそのまま頭を撫でる。

『芽衣……?』

「あ、ごめんなさい。」
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ