夢@Asaheim

□05
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場面が変わる。教会の前。
子供の宮田の視線の先にいる人物は、黒い服を着た、同じ年齢ほどの少年。
黒い服の少年は、空を見上げて笑っている。

(まきの……さん?)

芽衣は目を細める。
牧野の視界に、宮田は入っていない。宮田は遠くから牧野を見たまま何かを言いかける。
口を開いたものの、声が出る前に宮田は口を閉じた。そのまま拳を握る。
きびすを返し、芽衣のほうに向かって歩いてきた。
そんな宮田の目には、涙が沢山たまっていた……。
過去視はそこで終わる。

芽衣は写真を持ったまま、床に座り込んでいた。
目から涙がこぼれ落ちる。
当時の宮田の感情が、芽衣の胸の中に渦巻いている。

牧野を兄さんと呼びたかった宮田。

もっと村の友達と遊びたかった宮田。

宮田に課せられた使命を背負うことに怯える宮田。

母親からのねじれた愛情を受け入れられなかった宮田。

父親からいつも冷たくされ、寂しさと憎しみを持っていた宮田。

芽衣は写真を抱き締めて、ぽろぽろと泣いた。
宮田に課せられた使命が一体何なのか分からなかったけれど、
宮田が苦しんでいることはすぐに分かった。
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