夢@Asaheim

□04
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天使と黒羊 04

コンコンと、院長室で軽いノック音がした。

椅子を半回転させ、ドアへと歩く宮田。
ドアを開くと看護士の黒川芽衣が立っていた。

「宮田先生、お手伝いに来ました。」

柔らかく彼女は笑った。
眩しすぎるくらいの笑顔で、宮田はすぐに目をそらす。
自分が彼女に飲み込まれてしまいそうだった。

「どうぞ入ってください。お忙しいところをすいません。
実は少し、院長室の資料を整理しようと思いまして……。」

宮田は戸棚や積み上げられたダンボールから、紙の束や古い本、
昔のカルテなどを取り出した。少し埃臭い。
紙が日に焼けて、少し変色していたりする。

「会議の資料やカルテが混ざっていたりするので、それを分けてダンボールに入れてください。
あと、これらの本は使わないので、資料室に持って行ってくれませんか?」

芽衣の前に、資料や本が積み上げられた。
彼女は少し苦笑したあと、「分かりました」と宮田に返事をした。

「本当は女性にこういう仕事はさせたくないと思うのですが、芽衣さんにやって欲しかったので……。」

いつも表情の変わらない宮田が、少しだけ申し訳なさそうな顔をする。
芽衣は首を振った。

「いえ、いいんです。先生を支えるのが私たち看護士の役目ですから……。」

そう言うと、彼女は早速仕事にかかった。
テキパキと資料を分けていく芽衣を見て、宮田は鞄に荷物をつめた。
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