夢@Asaheim
□Dear.屍人ノ君
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「きゃっ!!!」
ぽすんと、誰かの腕におさまって、顔を胸に押し当てられる。
鼻腔を刺激する優しい香りに、私は嬉しくなった。
牧野さんだ!!!
次第に目から涙が溢れてくる。
彼の胸に頬をすりよせ、いつも以上に甘えた。
牧野さんは何も言わず、ただ私を抱きしめる。
いつも温かい牧野さんは、今日はなぜだか体が冷えていた。
まるで私から熱を奪っていくような冷たさ。
「よかった……。私、牧野さんをずっと探してたの。
心配で心配でたまらなかった。ねぇ、牧野さ……」
そこで顔を上げ、私は絶望した。
牧野さんが……いつもの牧野さんではなかった。
何て言えばいいんだろう。
鼻や口がなくて、体の上に、肉の塊だけがのっている。
目すらなく、私を見る、いつもの優しい眼差しを感じることができない。
悲鳴を上げることさえできなかった。
だって牧野さんは、こんな生き物になっても私を優しく抱きしめてくれるのだから……。
「牧野、さん……。」
私の声に反応して、彼は両手で私の頬を包みこんだ。
今になって気付いたけれど、牧野さんの手は、血で汚れていた。
私の頬に赤がつく。