夢@Asaheim
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しばらく牧野と過ごした芽衣は、外がもう暗くなっていることに気付く。
「大変!!!」と声を上げて彼女は慌てて立ち上がった。
「牧野さん、長い時間すいません!!!私そろそろ帰らなくちゃ!!!」
「いえ。私の仕事は、皆さんのお話を聞くことですから。」
牧野も立ち上がる。
芽衣と一緒に入り口まで行く。
彼女は教会を出る前に、ぺこりと頭を下げた。
「牧野さん、今日は本当にありがとうございます。それでは。」
華奢な体が翻る。
彼女の姿が闇に溶け込む前に、牧野は芽衣を呼び止めた。
「芽衣さんっ!!!あの……その……私も今日は、ありがとうございました。
名前で呼んでもらえて嬉しかったです。よかったらまた来てくださいね。」
振り返った芽衣の顔は、笑顔が溢れていた。
※※※
次の日。
着替え終えた芽衣は、ナースステーションへと向かった。
いつもはカーディガンを着ているが、今日は着ていない。
昨日、寝ている宮田の肩に、カーディガンをかけてきたから。
春といえど、まだ肌寒い。羽生蛇村が山奥にあるせいなのかもしれない。
腕を擦りながら芽衣はナースステーションに入って行った。
「おはようございます。」
「おはよう、芽衣さん。あら?あなた寒くないの?
芽衣さん、いつもカーディガン着てるじゃない。今日はどうしたの?」
年配の看護士が驚いた顔をしている。
芽衣は苦笑して、「ちょっと……」と呟いた。
引き継ぎが終わり、業務が始まると、他の看護士たちが一斉に動き出す。
芽衣は席について、データをパソコンに打ち込み始める。
少し肌寒くて無意識に腕をさすっていた。