夢@Asaheim
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天使と黒羊 03
父と母が死ぬ寸前、二人は幼い私に言い聞かせた。
私にはもう一つ、『黒川』という古い名前があると……。
その名前は呪われた名前だと言う。
それが分かってて、私はあえて、『黒川』という名前を継いだ。
二人がその時、うわ言のように繰り返した言葉の意味が知りたかったから。
『神代には、気をつけて。』
その言葉を残し、父と母は帰らぬ人となった。
二人を殺した犯人は、未だに誰か分かっていない。
※※※
「牧野さん、私の懺悔、聞いてもらえますか?」
無理矢理笑う芽衣を見て、牧野は小さく頷いた。
二人は教会の椅子に腰かける。ポツリポツリと芽衣が話始めた。
「牧野さん、私今日、他人が羨ましいって思っちゃったんです。
そういうのって、いけないですよね。自分は自分、他人は他人なのに……。」
「芽衣さん……。」
芽衣の泣き出しそうな顔を見て、牧野はゆっくり息を吐く。
彼女が何か、とても大きなものを背負ってる気がした。
牧野は芽衣の背中に手を当てて、静かに言った。
「芽衣さん、他人が羨ましいと思う気持ちは誰にでもあります。
それは、あなたが人間として、生きている証拠なんですよ。
無理に気持ちを抑圧しなくてもいいと思います。」
彼は優しく声をかける。
芽衣の背中をゆったり上下にさすって……。
数分間何も言わなかった芽衣が、小さく「ありがとう」と呟いた。
牧野はそんな黒川に柔らかく微笑みかけるのだった……。