夢@Asaheim
□天使と黒羊 01
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「もう、ここには慣れましたか?」
ドアに手をかけたままの芽衣が振り返る。
口元を緩ませたあと、彼女は答えた。
「はい。宮田先生も含めて、みんな暖かい方ばかりなのでだいぶ慣れましたよ。
最初はやっぱり、大学病院とは少し違ったから、戸惑いましたけど……。
それじゃ私、仕事に戻りますね。」
芽衣はそう言って、軽く会釈し部屋を出ていった。
お茶を飲みながら宮田は自嘲ぎみに笑った。
「俺を含めて、みんな暖かい……か。
俺はそういう人間には値しないのだが……。」
ぐいっとそのまま、お茶を飲みほした。
その日から彼は、自然と芽衣を目で追うようになる。
芽衣はよく笑った。
そして、彼女はいつも表情をくるくる変えることに宮田は気付く。
楽しい時の表情、悲しい時の表情、怒った時の表情……。感情が豊かだった。
きっと彼女は、自分の知らないような暖かい家庭で育ったのだろうなと、
宮田はぼんやり彼女を眺めていた。
「芽衣さん、頑張ってますよ。」
不意に後ろから声が上がり振り返る。
恩田美奈が立っていた。
柔らかい微笑みを宮田に向けている。
「ああ。そうみたいですね。」
「宮田先生、最近よく芽衣さんのこと見てますよね。」
しばらくの沈黙のあと、美奈は芽衣を見つめたまま呟く。
事実を言われた宮田は一瞬焦るが、
ポーカーフェイスを崩さず美奈に言葉を返した。