夢@Asaheim
□天使と黒羊 01
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天使と黒羊 01
真っ白なナース服に身を包んだ少女が微笑んで立っていた。
大学病院から来た天使……と、他の職員は囁いている。
彼女はぐるりと辺りを見回したあと、再び笑って頭を下げた。
「今日からお世話になります、黒川芽衣と言います。
よろしくお願いします。」
天使はとびきりの笑顔を見せた。
拍手の沸き起こる中、宮田だけが彼女から視線を外したのは誰も気付かなかった。
※※※
患者のカルテと医学書に集中していた宮田は、
すでに遅い時間になっていることに気付く。
時計の針は深夜近くをさしていた。
椅子にもたれかかり、目頭を指でつまんでいると、不意にノック音がする。
この病院にいるのは、今日の夜勤者と患者だけだ。
患者が院長室を訪ねてくるわけがない。
職員か?と宮田は思ったあと、ドアに向かって返事をした。
「宮田先生、お茶を持ってきました。」
そこにはあの、天使が立っていた。
「黒川さん……。」
彼女の名前を呼ぶと、芽衣は静かに宮田の前に湯飲みを置く。
「今日は夜勤なんです。
さっき先生の部屋の前を通ったら、明かりがついていたので……。
これ、どうぞ。」
湯飲みに注がれたお茶に視線をうつす。
手を伸ばすと暖かい感覚がおとずれた。
熱くもなく、ぬるくもない。
お茶を舌の上で転がしたあと、宮田はとっさに、
部屋を出ていこうとする芽衣に声をかけた。