夢@Asaheim

□守りたいもの
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恩田美奈の妹・恩田理沙と合流した宮田は、
彼女を連れて旧宮田病院へと続く道を急いだ。
病院まであと数メートル……。
二人の足はさらに早くなっていく。
そんな時だった。理沙が「あっ!!!」っと声をあげ、ぴたりと足を止めてしまった。

「どうしました?」

宮田が尋ねると、理沙は前方を指差した。
地面に転がった白いもの。
それが人だと分かるには、そこまで時間は必要なかった。
理沙が走りだし、宮田も続く。
もしも屍人だったら……?
そんな考えは彼の中には浮かんでこなかった。

「だいじょうぶで……」

とっさに声を上げた理沙は、そのまま言葉を飲んだ。
倒れていた人間は、彼女にとって大切な人だったから。

「芽衣っ!!!」

不安そうな顔をし、抱き起こした彼女を揺さぶる。
理沙と同じ歳の少女、黒川芽衣はこの村でたった一人の理沙の友達。
姉の美奈と同じで、宮田病院に勤務している看護士だった。
唯一違うのは、彼女がこの村の生まれではないこと。
1年前、羽生蛇に来たばっかりなのだ。

「芽衣……?しんじゃった……の?」

何も反応のない芽衣の肩を、ぎゅっと抱く理沙。
宮田は芽衣をのぞき込むと、すぐさま呼吸や心拍数、外傷などを確認した。

「大丈夫です、生きてるみたいです。
無数の傷はあるものの、大きな怪我はしてないようですね。」

そのまま理沙から芽衣を引き剥がすようにすると、彼は芽衣を抱えた。
ナースシューズのまま山道を走ったのか、白い足には無数の切り傷ができている。
白かったであろう服は泥まみれだった。

「理沙さん、芽衣さんのことは俺に任せてほしい。」

宮田はそう言い残し、すぐに病院へ入っていく。
理沙は芽衣が生きていた安堵からか、
泣きながら宮田のあとをついていくのだった。
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