夢@Asaheim

□02
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place where one can be oneself 02


ダミーシステム起動実験はうまくいった。
芽衣とエヴァ初号機は何の問題もなくシンクロした。
それは芽衣がエヴァや使徒たちと近い存在だからなのかもしれないと、ゲンドウは初号機を見つめて思った。
いや……もしかしたら、全く別物……。
彼女は人間ではあるが、今の人間を越えた存在。
芽衣はエヴァの痛みを感じ、同時に使徒の痛みも感じる。
彼女に初めて会った時、ゲンドウはまさかと思った。
けれども芽衣は、本物だった。

「お父さん。私、ちゃんとお父さんの役に立て……た?」

ふと背後で声が上がり、振り返れば不安そうな顔をする芽衣がいた。
ゲンドウはいつもの厳しい表情を少し和らげ、芽衣の頭を撫でた。

「ああ。お前は私の役に立っているよ。今日の実験もよかった。
もしダミーシステムを使う事態が発生したらよろしく頼む、芽衣。」

普段口数の少ないゲンドウが、今日は淡々としゃべる。
それが嬉しくて、芽衣は力強く頷いた。
一度、芽衣は彼に背を向けたものの、何かを思い出し、もう一回ゲンドウのほうを見る。

「……ねぇ、お父さんはどうしてシンジ君に冷たいの?」

「どうした、突然……。」

唐突な彼女の質問に、ゲンドウは静かに答える。

「ううん。ただ、ちょっと不思議だったの。
私はお父さんの本当の子供じゃないけど、シンジ君はお父さんの子供でしょ?
どうして私みたいに優しくしてあげないの?」

「………。」

ゲンドウは黙ったままだった。
純粋な目をして尋ねかける芽衣に、言葉が返せない。
何も言わないゲンドウを見て、彼女は瞳を伏せた。

「……憎い、から?シンジ君のことが……。
ユイさんがお父さんに注いでくれた愛情を、全部シンジ君が取っちゃったから?」

眼鏡の奥の瞳孔が、きゅっと締まった。
真実を言い当てられ、ゲンドウは芽衣の顔を直視できない。
そんな彼の反応を見て、芽衣は小さく笑った。

「お父さんは、ユイさんがいれば幸せ?
ユイさんがいれば、シンジ君にも優しくできる?
大丈夫だよ、お父さん。私が絶対、ユイさんを取り戻す。私が神様になるよ。
私がお父さんのために、今の神様を……殺してあげるから。」

ゲンドウの目の前でにっこり笑った芽衣は、無邪気な穢れのない少女だった。
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