夢@Asaheim

□想いのカタチ
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あの日から……芽衣と神坂先輩が保健室でキスしてるのを見た日から、俺はずっと芽衣を避けている。
あいつがいつも悲しそうな目で俺を見てることも知ってる。
この前、もう自主練に来るなって言ったら、芽衣は泣きそうな顔をした。
あいつの言った言葉が耳に残ってる。

『風間君にとって、私は邪魔なの?』

風が芽衣の髪を揺らし、ポロリと涙を流すあいつを、不謹慎にも綺麗だと思ってしまった。
一瞬ためらったが、何も言えなくて……「邪魔だ」って言えなくて、俺は無言で背を向けた。

自分でも分かってる。

俺が、お前をどうしようもなく好きなことぐらい。

神坂先輩が芽衣とキスしてたって、俺はそれぐらいじゃお前を諦めきれないことも……。
でも、素直になれなくて……。
サッカー部の中でも、神坂先輩と芽衣はお似合いだって話が出てる。
今さらながら、芽衣は俺にとって、高嶺の花なんだって考えるようになった。
あいつに嫌いになってほしくて、わざと沙耶香と楽しげに話して、仲いい感じを芽衣に見せつけて……。
その度に沙耶香がそばで笑って、芽衣は悲しそうに瞳を伏せる。
そんな芽衣を見て、俺の心はいつも荒れる。

違う。俺のそばで笑ってて欲しいのは芽衣、お前なんだよ……。

うまく、それが言えない。

腕に巻かれたミサンガを光にかざし、じっとそれを見る。
綺麗に編み込まれたそれ。
芽衣の、想いのカタチ。

俺は………



想いのカタチ



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