夢@Asaheim
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place where one can be oneself 05
赤いプラグスーツの子が集中治療室に隔離された日、シンジ君もまた、隔離された。
命令違反とエヴァの私的使用。
違う。碇司令は……お父さんは何も悪くない。シンジ君だって悪くない。
悪いのは私。
ダミーシステムを動かしたのも私。
赤いプラグスーツの子を……殺そうとしたのも
わ た し 。
シンジはミサトの家で自分の荷物をバッグにつめていく。
洋服をつめ終わったあと、ふと手を止める。
ぼんやりと父の言葉を思い出した。
『また逃げるのか、シンジ。』
『シンジ、少しは大人になれ。』
(そんなこと言われたって、何が大人なのか分からないよ……。)
ぎゅっと目をつぶったあと、バッグのチャックをしめて荷物を持つ。
何もなくなった部屋に、ポツンと置かれる携帯。
着信があったことを示す光が点滅しているが、
シンジはそのまま無視して玄関へと向かう。
靴を履いているところに、腕を怪我したミサトと、
悲しそうな顔をするペンペンがやって来た。
置いていった携帯をミサトが差し出すが、シンジは受け取らなかった。
置いていったもの。もう捨てたもの。
(僕はもう、誰とも笑わないって決めたから……)
シンジが外へ踏み出そうとする前に、ミサトが静かに語った。
彼女自身をシンジに重ねてしまったこと。
そしてシンジがそれを重荷に感じていたのを知っていたことを語る。
シンジがエヴァに乗ることに対して失望したことも……。
「だけど、私あなたにっ……」
そんな彼女に腕を捕まれる前に、シンジは一歩、外へと出た。
ミサトには感謝してた。ミサトのおかげで、シンジはいつも笑えてた。
けれども、この家を出ればもう、誰とも笑えない。
シンジはまた、一人になるのだから……。
「僕はもう、誰とも笑いません。」
その言葉だけを残して、彼は静かに家を出ていった。
ペンペンが寂しそうな鳴き声を上げても、振り返らなかった……。