トラブルメーカーの受難
□1、バカ兄貴の絶対当たらない予言。
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1.
――望むのは唯一つ、平穏な日常だけ。
部屋に置かれた姿見の前に立ち、私は一つ息を吸う。
ナチュラルメイクは上出来、髪のセットはバッチリ、制服もシワ一つなく完璧だ。
それを確認して私は安堵する。今日から新生活が始まるんだから、慎重になりすぎることはないもの。
鏡の中の自分を見つめて、私は思う。
生まれてこのかた十六年。私は数々のトラブルに巻き込まれてきた。
地味なものなら鳥のフンの被害に一日三回も遭ったり、エレベーターの中に四時間も閉じ込められたり。
派手なものなら、銀行強盗の現場に鉢合わせてしまい、人質に取られたりなどなど。
人は私を「トラブルメーカー」と呼ぶけど、冗談じゃない。
トラブルが勝手にやって来るのであって、私がトラブルを起こしてる訳じゃないんだから。
けれど、周囲はそんな風には思ってくれない。トラブルに巻き込まれることを嫌い、私はいつも遠巻きにされる日々を過ごしていた。
まぁ、厄介ごとには関わりたくないって気持ちはわかるけど。・・・・・・あーあ、自分で言ってて辛くなってきた。
そういう訳で、私は決意した。
これから始まる転校先の高校での新生活。それだけは絶対に平穏なものにしようと。
幸運にもその高校には中学生時代の同級生は一人もおらず、六月という非常に微妙な時期ではあるけれども全てを一から始めるにはもってこいだ。
もう絶対にトラブルには巻き込まれない。私の身にふりかかるトラブルは全て回避してみせる!
平凡な友達を作り、平凡な日々を過ごし、平凡な出会いをして、平凡な恋をする。それが私の目標だ。