不思議の国のアリス様っ!?
□第1章−2、旅は道連れっ!?
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1.
「……なんで、俺達、まだ一緒にいるんでしょう」
ピヨーロロと鳴く鳥の声。目映いばかりに射し込む、太陽の光。
これ以上の穏やかな朝は無いのではないか、と思うほどの暖かな朝に、暗い声でそんなことを言う。
一人の老けた男――ディークはげんなりとしていた。
その隣には、青いウサギのぬいぐるみを抱えた、天使と見まごう程の愛らしい少女――アリスが地図を手に、うんうんと唸っている。
「そんなの理由はわかりきっているでしょ。あなたが地図を無くして迷ってるって言うから、地図を持ってるあたしと行動しているんじゃない」
端が所々ぼろぼろになって欠けている地図から目を上げて、アリスは不機嫌そうにディークを睨み付ける。
それに少しおののいて、ディークはその通りです、とこくこく頷いた。
そう。今も優位に立っているのはアリスなのである。
何故、この二人が今も一緒にいるのか。答えは、アリスが言った通りだ。
――はぁ、これからどうするかなぁ。
アリスのぬいぐるみを見つけた後。太陽も沈み、夜の森を歩くわけにはいかず、二人は火を起こして暖をとっていた。
――どうするって?
びしょびしょに濡れたぬいぐるみ――アンを火に翳して乾かしながら、アリスが訊ねる。
――俺さぁ、もう五日間もこの森で迷ってるんだよ。地図無くしちまって……。
アリスは笑うこともなく、呆れることもなく、
――バカね。
と一言言った。
一瞬、ムカッときたが、まことその通りなので何も言えない。ディークは口を尖らせた。
――あぁ〜、マジでどうしよう……。
そう項垂れると。アリスはあっけらかんとした顔で言った。
――どうしようって?
――だからぁ、地図無くしちまって、途方に暮れてんだよ。こっちは。
――どうして途方に暮れる必要があるの?
何を言っているのか。同じ事を繰り返すアリスに、いい加減頭にきて、ディークは声を荒げた。
――だぁかぁらぁっ!
――あたしと一緒に来ればいいじゃない。
何でもないといった様子で、アリスが答えた。
――はい?
――だから、あたしと一緒に来ればいい。あたし、地図持ってるもん。
ほら、とアリスが肩に斜めに下げたバックから、所々欠けた地図を取りだして、ディークに見せた。
――……。
これは、何て言ったら良いものか。
――どしたの?
――……俺がついてってもいいのか。
――うん。だって、あたし一人がこの地図を独り占めにしても、何の意味もないもん。どうせ、この森を抜けるまでだし。それに、ディーは間違ってあたしに発砲したとはいえ、アンを探すの手伝ってくれた。だから。
――……ありがとよ。
昨日の晩にやりとりされた会話はこんなもの。
そして二人と一匹はここにいるわけだ。