長編小説部屋

□スターサイドホテルオープニングセレモニー【前夜際】
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「LadyS&Gentleman皆々様…本日のMaineventは人間競馬でごさいます。あなたが賭けた番号が当たりますかどうかどうぞご観覧下さいませ。そうです…この皆様が賭けた大金が勝てばあなたの手の中に!!まさに夢…夢のよう!!と思っているそこのあなた」


やけ食いしてる森田に何故か頭上のライトが移動し照らされた『へっ?!』と顔を上げ辺りを見渡す…檀上の上に立つ人物に俺と自分を指さし首を傾げれば回りがざわざわとどよめき視線が森田に集中した

「そうですそこの貴方です。処がドッコイそんな貴方でも夢じゃなくなるんです」


檀上に立つ人物に嫌な笑みで頷かれれば会場が笑いの渦とかする…訳が分からず一応辺りに苦笑いしてみればライトが檀上に戻る


「今日は厄日かよ…」

森田は溜息吐きボソリと呟けば黒服からビールのグラスを受け取りそれを一気に飲み干した。檀上のライトが大金の入った透明な四角いガラスの箱を照らしだす。その中身はイクラ入ってるかも分からない札束がぎっしりと詰め込まれていた…またもどよめきはじめる会場…

「それでは皆様頭上に注目して下さい。」


ワルキュウレの音楽が鳴り響き会場が明るくなる頭上に注目すれば鉄骨の前にゼッケンを付けている数名の人の姿があった…

「始まりますよぉー!Lady-go」

掛け声と共にゼッケンを付けた者達が一斉に鉄骨に足を踏み出した。恐る恐る前へと慎重に


「え…あ……」


それを複雑な気持ちで見ていた森田がその中に自分の知る人物を見つけて平井の肩をとんとんと叩く。平井は下らないと頭上には目もくれず酒を飲んでいた…が森田に呼ばれ顔を向けた。口をぱくぱくしながら頭上から目を離さない森田


「どうしたよ?森田」
と自分も頭上を見上げれば

「銀さん…あ…あれ…カイジ君じゃないですか…」

と指をさす

「………あいつ…何やってんだ……」


よろよろと歩くそのカイジと呼ばれた青年を冷やとしながら見つめれば

「まあ、落ちても死にゃしねえだろうが…落ちた場合森田…なるべく近くにいて受け止めてやんな」


森田も頭上から視線が外せず落ちそうになるたび冷や冷やしながら

「そうですね」

短い返事を返し鉄骨の近くに行こうとした時…


「おう、開司そいつ、その前の奴押しちまいな。そうすりゃ助かるぜ…ほら押しちめえ」


その声の主をカイジが見てギョッとした表情を浮かべる

「……あの人が何でこんな所に……」


一斉に会場内が沸きざわめく。誰からともなく押せ押せとヤジが飛びはじめた。

「………」


その先にいる人物を見て森田は足を止めた

「あれは……」

自分の見知った人物だったからだ…後ろから肩を叩かれ振り返ればすぐ後ろに平井が立っていた


「銀さん…あれ」


平井もまた先ほどの声が聞き覚えのある声だっただけに確認にきたのだ


「ああ…あいつも来てたみてえだな…森田、カイジはあいつが何とかするだろうからいくぞ」


その言葉には、その人物とはあまり関わりたくないという真意が見えた。即座に身を翻した平井に「はい」と頷き背中を追いかようとした時


「よお銀二。人の姿見て逃げるとは随分じゃねえか」

目敏く見つけられ声を掛けられ平井はやれやれといった様子で肩を落とした。振り返えり自分を呼んだ人物の元へと近づく


「お前さんも来てたんかい…」

赤木の挑発は聞かなかったことにして適当に挨拶を交わした


「しっかし何でまたあいつはこんな下らねえ競技になんか出てやがるんだ?」


赤木に会わされてしまった張本人のことを聞けば赤木は鉄骨に視線を向けたまま煙草をふかしている

「さあ?俺にも分からねえ。数日前にな…」

赤木の話しを聞けば…数日前滅多にならない開司の携帯に一本の電話が入ったと言う。珍しいので赤木が寝た振りをして聞き耳を立てていれば何やら遠藤という男からであまり宜しくない話しだったよだ。借金だの…競技に出ればだのというキーワードが出てきては顔を青くしたり泣きが入ったりと一人で百面相をしていたという。

「だから気になって開司の後を付けて来たらここに着いたんはいいけど、途中見失っちまってな…で、ちーとばっかり後から来た奴にチケット譲って貰って入りこんだらこの展開てな訳なんだは…」

一通り話しを聞き終われば平井は眉間に皺を寄せた

「ほーう。そりゃまた宜しくねえ話しだな」

少なからず開司が帝愛に関わっているということ…しかもこんな競技にでるくらいだから裏で何かが動いている。そしてその鍵を握っているのが遠藤という男……こりゃあまり深くは関わりたくなねえな…さっさと退散したほうが身の為か……と思考を巡らせていた時鉄骨を渡る開司がゆらりと揺れた。森田が走りだそうとするより先に赤木が素早く動いた。

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