過去拍手&リク
□その 幸せな一時を…
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「謙也さん、これ――……」
自室に戻ってきた俺を待っていたのは、無防備に眠る君。
冬休み前の期末テストも終わり、授業も午前中のみ。
たまたま部活も無い休日と呼べるこの日。何とかして謙也さんと一緒に過ごすきっかけが欲しくて…以前借りてたCDを口実に我が家へ呼ぶ事に成功した。
部屋に招き入れた後、借りていた物を返そうとしたが、自室に置いてなく。
謙也さんに少し待っててもらうように言い、ついでに飲み物も取りに行き戻ってみると…ベットに凭れ掛かって眠る謙也さんが視界に飛び込んできた。
「数分の間に寝るか…しかもマジ寝やし」
起こさないように静かに近付き、眠る謙也さんを覗き込んでみるとなんとも幸せそうな…というか半開きの口アホ面で眠ってる。
その姿に少し苛立ちを覚え身体を揺すってみるが、唸るだけで一向に起きる気配が無い。
「ま、ここの所…受験勉強とかで忙しかったし、ちょっとくらい寝かしとこか…」
今日はまだ時間もあるし急ぐ事はない。
ゆっくりできる時間はあるのだ、と自分に言い聞かせ謙也さんを起こすのは諦める。
気持ちよさそうに眠る恋人の寝顔に一度口付けた後、俺はパソコンの電源をつけた。
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あれから、どの位の時間が経ったのだろう。
自分もパソコンに夢中だったので気にしていなかったが、時計を見ると3時間以上経過していた。
思っていたより長い時間没頭していたのだと気づく。
「そういえば謙也さんは…?」
今の今まで忘れていた謙也さんの存在を確認する為、ベットの方に視線を移してみるが、状況は数時間前と大して変わっていない。
違ってるトコと言えば、眠ってる謙也さんの口から光る何かが垂れてるくらいだ…。
人ん家来て数時間も爆睡とか理解できない。
流石に、起こさないと二人っきりでいる意味が無くなると思い、眠ってる謙也さんの傍に近寄る。
「…謙也さん、起きてください。アンタ何しに来たんすか?」
「んー……」
「はよ起きろや」
なかなか起きない謙也さんに少し苛立ちを覚えながらも、揺する手はあくまで優しく起こす。
最初は起きる気配も無かったが、閉じられていた瞼が薄く開いたと思えば…俺の姿を見て嬉しそうに笑った。
まだ意識は夢の中なのだろう。
へらり、となんとも間抜けな顔で笑ったと思ったら、俺の腕を抱きかかえてまた眠る体制を取る。
慌てて掴まれた腕を揺すり、起こそうとするが…
「ひかるもいっしょにねよー…?」
「!」
ただでさえ不意打ちの笑顔に驚いていたのに、腕に擦り寄り幸せそうなに微笑む顔が…また可愛くて、鼓動が早くなる。
「一緒に寝よう…ってアンタ誘ってるんすか?」
聞こえないとわかっていても聞かずにはいられない。
音の無い部屋から、すぅすぅと可愛い寝息だけが響く。
深く眠ってしまった様で起きる事はないが、今度は腕を抱きかかえられいるので身動きが出来なくなってしまった。
俺は小さく溜息を付き、謙也さんの横に座り直し寝顔を眺める。
眠っている謙也さんは何時もより幼くて、可愛い。
以前、寝顔を見た時にそんな事を言ったら顔を真っ赤にして怒られたが…改めて寝顔を見てもそれは変わらない。
傍らで幸せそうに眠る恋人の姿を見ていると、次第にこちらも眠気に襲われてきた。
謙也さんが起きる気配も無いし、このまま何もしないでいるより一緒に眠ってしまった方がいい。
結局、予定していた事は何一つできなかったけど…
「たまにはいいか…こういうのも」
無防備に眠る可愛い恋人の唇に再度口付け、俺も静かに目を閉じた。
その 幸せな一時を…