Animal People3-旅立ち

□7.楽しき思い出
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 8月も半ばを過ぎた。この頃竹流は久しぶりにみんなに声をかけた。みんなで旅行に出てみないかと。もちろんみんな揃ってこれには驚いた。そして本当に大丈夫かと口々に言った。一方竹流はにっこり笑って、大丈夫だと答えた。最初はみんな戸惑っていたものの、少しずつああしよう、こうしようと計画を立て始めた。しかし今回は唯がいるので、できるだけゆったりとした計画にするよう心がける。また日程は1泊2日と短くした。他の者達もがんばって予定を合わせ、結局秋田への小旅行が決定した。突然のこととはいえ、みんなその日を待ち望んだ。
 出発当日。みんなは早めにマンションのエントランスに集合した。1泊2日のためみな荷物は少なめだった。だが約1名少々大きな荷物を持っていた者がいた。竹流である。どうやら自分の荷物の他利紗と唯の荷物も持っていたようだった。
「おはよう。今日は無理なお願い聞いてくれてありがとう」
「いや、別に。でもこの人数の予約。よく取れたよな」
晶が驚きながら言った。それに優一も同意する。なんせ総勢13人もいるのだから。
「それは僕も思った。だって1週間と少ししかなかったし」
「そう言えばみんな揃った?そろそろ出ないと余裕なくなるよ」
「今利紗が唯を連れて来ると思う」
間もなく利紗が唯を連れて現れた。
「ごめんなさい。遅くなってしまって」
「全然。みんないるな?じゃあ、出発と行こうか」
泉の号令にみんな頷いた。最寄り駅まで歩き、そこから新幹線の通っている駅まで電車に揺られる。予定通りに新幹線ホームにたどり着いた。
「まずは無事到着。まだ少し時間あるから、買うものあるなら行ってきなよ」
新矢に言われ、女達が中心になって買い物にいく。もともといる人数も半端ないため買ってきた量もそれなりだった。
「そんなに買い込んできてどうするの?」
「でも、一応人数いるしすぐなくなると思うよ」
未玲の言葉通りみんなで分けるとすぐなくなった。新矢ははあとため息をつく。それから間もなく乗車する新幹線がホームに入ってきた。みんな新幹線に乗り込む。新幹線に乗り込むと利紗は竹流に唯を預け、眠り始めた。唯もよく眠っていたので竹流はその手に抱いた。その姿を他の者達が優しく見守った。旅行なので人によってははしゃぎたいのはやまやまであるがこれではそうもいかない。とはいえ、一応遊ぶ道具等々は持ってきていたのでみんなそれぞれ車内での時間を過ごす。だがかなり長旅。そして朝少し早かったため、結局みんなひと寝入りしたようだった。そして新幹線で約4時間。ようやく秋田に到着した。お昼までは少し時間があったので、駅前を少しぶらつく。12時を少し回る頃、一向は昼食をとることにした。昼間から団体でにぎやかに食事をする。腹ごしらえをしたところで、近辺の地図を見て、次の行き先を決める。ホテルに荷物を置くまでの予定はきちんと決めてなかったのである。はたまたここでああでもない、こうでもないと大騒ぎになる。どうにか行き先が決まり、一向は動き出した。1時間くらいかけて近辺を散策した後、ホテルへと向かった。大きな荷物はホテルに置き、手荷物だけ持って予定通りのルートをたどる。今回はどちらかというと山のほうをメインに予定を組んでいた。まずは軽い山登りに、川遊び。みんなそれぞれのペースで楽しんだ。特に利紗は新矢達よりももっとゆっくりしていた。また川でははしゃぎ過ぎた春彦がずぶ濡れになる一幕もあった。
「おい、何やってんだよ。春彦」
「ごめんなさあい」
春彦はしゅんとする。その様子を見て珍しく冬華が少し笑う。
「笑うなよ。冬華」
「ごめん。春彦。でもちょっとおかしくて」
冬華の言葉にみんなが笑う。春彦はげんなりした。
「とにかく冷える前に着替えてきなさい。一応着替えは持ってきたんだから」
望に言われ、春彦は着替え始めた。その間も零、晶、優一、恵美理の四人は軽い水遊びを続けていた。その様子を少しあきれた顔で新矢が見つめる。
「あーあ。あいつらもあんなにはしゃいじゃって。春彦君の二の舞になっても知らないぞ」
「心配性ね。新矢は」
未玲がふふっと笑った。竹流と利紗も4人を見ながら微笑む。
「そういえば竹流。おまえ達はいいのか?あれだったら唯ちゃんのことしばらく見てるぞ」
「うん。少しゆっくりしていたいから」
「そうか。ならいいけど…」
少し気を使う新矢に竹流は微笑んだ。
「ありがとう。新矢兄さん」
春彦が着替えを済ませ、川で十分遊んだ後は森の中を散歩した。草花で遊んだり、木漏れ日の中に佇んだり。ここでは望の思わぬ能力が発揮された。草花や木の名前を言い当てて言ったのである。これには泉も驚いた。
「よく知ってるな。俺は、こっちは専門じゃないし」
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